29日に島原半島を通過した台風10号は現在四国付近を東に進んでいます。県内は少しずつ強風域を外れつつあります。爪痕を取材しました。
29日の最大瞬間風速15.6メートル。降り始めからの雨量が196.5ミリにのぼった島原市では…。
吉永龍司アナウンサー:
「こちら島原市の温水プールの施設なんですが、トタン屋根が剥がれて落ちてしまっています。そして一部、鉄骨がむき出しになっています」
有明海沿いの島原市弁天町2丁目の「島原市立温水プール」では、約30メートルのトタン屋根8枚ほどが剥がれ落ちました。29日正午ごろ市民が見つけ、市に連絡しました。
島原市霊丘公園体育館・弓道場・堀川悟場長:
「色が変わってるトタン屋根がある。あの部分が(以前)飛んだという話を聞いたことがあります。最初屋根が飛んだと聞いたので、1枚くらいかと思ってたんですけど、何枚も飛んでるのでびっくりしました」
プールは築50年ほど。堀川場長は、「海に面しているため、海からの風をもろに受けたのではないか」と話していました。
夏休み、プールには連日多くの子どもが訪れていましたが、29日は台風で休館していたため、人はおらず、けがをした人はいません。施設再開のめどは立っていないということです。
吉永アナ:
「雲仙市小浜町の土砂崩れがあった現場です。現在、土砂の撤去作業が行われています」
小浜町富津の県道北野千々石線では、29日に幅約50メートル、高さ約10メートルにわたって土砂崩れが発生し、1日経った30日も全面通行止めになっています。県によりますと、現在も復旧のめどは立っていないということです。
長崎市では29日に最大瞬間風速24.1メートルの風が吹き、37.5ミリの雨が降りました。
小栁亮雄記者:
「建物が道路に倒壊していて、現在、撤去作業が進められています」
29日午前9時ごろ、長崎市本河内3丁目でごみが散乱していないか巡回していた市の職員から「倉庫が倒壊している」と市に連絡がありました。トタンぶきの倉庫が道路に倒れ込んで道をふさぎ、現在も全面通行止めとなっています。現場では所有者の60代の男性が1人で撤去作業を進めていました。
倉庫の持ち主:
「警察の方から連絡があって見に来たらこうだった。家の方は(被害が)そうなかったので、こっちも大丈夫かなと思っていた」
(Q.中には何を保管していた?)
「材木とか機械類ですね。(昔は)大工をしていて、やめとった。父親が死んでから」
29日午前8時11分に最大瞬間風速29.2メートル、午前9時までの24時間に87.5ミリの雨が降った佐世保市では、29日午前9時30分すぎ、四ヶ町商店街に連なる京町商店街の入口、高さ約8メートルの所に設置されていた縦約1メートル、横約6メートルの「京町通り」の切り文字看板が落下。落ちた看板を運ぼうとした50代の女性に風にあおられた看板が直撃し、顔から出血するけがをしました。
中嶋航大記者:
「看板の落下から1日。商店街の顔とも言えるシンボルのあった場所はいまだそのままの状態となっています」
佐世保京町商店街の組合長によりますと、31日から看板の修理に取り掛かり、早い段階で元の状態へ戻るよう復旧を急ぐということです。
また、市の南部では倒木による家屋への被害も発生しました。
中嶋記者:
「佐世保市宮津町です。大きな木が根元から倒れ屋根にのしかかっています。現在、撤去作業が進められています。」
東彼・川棚町との境に位置する宮津町では、29日午後5時すぎ、「電柱が折れ、倒木が屋根に乗っている」と付近住民から市に連絡がありました。家は空き家で誰も住んでおらず、けがをした人はいません。周辺では29日午前から停電が続いていたということです。
宮津町町内会長・浦信介さん(71):
「九電の人が来て電柱が原因と思うけど9月3日までには(電気が)回復すると」
電気が使える近くの公民館には、午前11時時点で1世帯7人が避難していました。
避難した住民:
「『バリバリバリ』と音がした雷かなと思ったら大きな木が倒れて。怖かった私も。70歳になるけど初めて(の経験)。水はどうにかできるけど電気は(できない)。冷蔵庫も役に立たなくなるから」
岩本忠成アナウンサー:
「大村市大村小学校に面している道路です。こちらの街灯、かなりの太さがありますが、真ん中部分から折れてしまっています。風の強さを物語っています」
29日の最大瞬間風速28.3メートル、31.5ミリの雨を観測した大村市の玖島1丁目では、高さ約3メートルの街灯の支柱が、約1.5メートルの高さで折れ、ライトのガラス部分が割れました。
岩本アナ:
「こちらも大村市です。かなりの長さのあります、この街灯。約6メートルです。この高さから街灯が折れてしまいました」
大上戸川に架かる金丸橋のたもとの水田町に立つ街灯も約1メートルの高さで折れ、道路に向かって倒れました。どちらもけがをした人はいませんでした。
また県内の消防局によりますと、午後5時現在、県内で10人が台風が原因によるけがなどをしています。特に高齢者が外で風にあおられて転び、けがをするケースが相次ぎました。
長崎市では、29日午前7時ごろ、70代の女性が風にあおられ転倒し、半日経っても痛みが続いたため119番通報。搬送先の病院で左足の骨が折れていると分かりました。
松浦市では29日午後2時ごろ、自宅から避難所へと歩いていた71歳の女性が風にあおられて転び、頭を打つなどしてけがをしました。
壱岐市では29日午前9時ごろ、台風の影響で停電し、エアコンが使えなくなった80代の男性が体調不良を訴え、救急搬送されました。軽度の熱中症と診断されたということです。
牛島ひかりアナウンサー:
「午前8時30分を過ぎたJR長崎駅前です。雨は断続的に降り続いています。けさから路面電車と路線バスは運行を再開しました。ただ西九州新幹線などは始発からまだ運転を見合わせています」
29日は閑散としていた駅前も路面電車やバスの運行が再開し、30日は通勤客の姿が見られました。一方、JR長崎駅の改札前では観光客が立ち往生していました。
兵庫からの観光客:
「観光で3泊4日の予定で来ました。これから予定していた午後5時くらいの(飛行機の)便で神戸に戻るっていう感じです。結構風も雨も弱まってきているので、早めに動いてほしいなと思います。結構困りますね。電車で長崎空港まで行こうと思っていたので動いてなかったら他の交通手段で行くしかないなって感じ」
29日は宿泊施設までたどり着くことが出来ず、予定を急遽変更して避難所で一夜を過ごしたといいます。
兵庫からの観光客:
「3泊目(予定していた)大村まで移動できなかったので、こっち(長崎市内)で避難所に行った。それも意外と地域の人と交流できて楽しかったです。結構いろんなことがあって、ハプニングが多かったけど楽しめました」
JR九州によりますと、長崎本線の鳥栖-諫早間、諫早-長崎間は、30日は終日運転見合わせ。西九州新幹線は30日の始発から運転を見合わせていましたが、上りの長崎発のかもめは午後3時から5本、下りの武雄温泉発のかもめは午後4時から4本臨時ダイヤで運行を再開しています。
長崎発の空の便は29日に続き30日も日本航空とオリエンタルエアブリッジ(ORC)が全便欠航。全日空は羽田と名古屋行きの最終便のみ運航します。
九州商船は、長崎-五島間のフェリーとジェットフォイル、佐世保-上五島間のフェリーをいずれも最終便のみ通常運航します。
県災害警戒本部によりますと、県内では29日午後2時時点で最大2802世帯4017人が各自治体の避難所に避難しました。
県内の停電は29日午前10時時点で最大11市3町の1万2020戸にのぼりました。九電が復旧作業に当たっていますが、30日午後6時現在も7市の1820戸が停電しています。