15日、県内各地でお盆の伝統行事「精霊流し」が行われました。
にぎやかに…そしてしめやかに。今年も故人の御霊をしのぶ思い思いの精霊船が流されました。
「魔除け」を意味する爆竹の音と共に、初盆の御霊を西方浄土へ送る「精霊流し」。長崎市寺町の晧台寺では、葬儀社の法倫會館が、担ぎ手がいないなどの理由で船を出せない遺族のために作った3隻の「もやい船」が並びました。
今年は186人の申し込みがありました。遺影や、家名が書かれた提灯を飾った精霊船。故人や家族の思いを乗せて船は流されました。
長崎市桶屋町のマンションの総合管理業、「トラスティ建物管理」の精霊船。
去年11月、がんで亡くなった前代表の中本幸人さん(享年60)の御霊を乗せて流しました。船は2隻で、全長約17メートル。家族や社員ら約60人が集まりました。
メモリードグループは、今年初めて諫早、大村地区で「もやい船」を出しました。全長15メートル、2連の船に34人の御霊を乗せました。
長崎市によりますと、去年6月から今年5月までに亡くなった人の数は前の年の同じ時期より172人多い6196人で、過去10年で最多。
精霊船は去年より186隻少ない1528隻で、コロナ禍を除くと平年並みの数でした。このうち2メートル以上の船は、去年より63隻少ない458隻でコロナ禍を除けば、過去10年で最も少なくなりました。2メートル未満の船は去年より123隻少ない1070隻でした。
供え物などをわらで包む「こも」の数は去年より2673個少ない2万50個で、この10年で最も少なくなりました。
みよしに大きく「非核不戦」と書かれた船もありました。
長崎民商・牧島信昭さん(62):
「やっぱり世界は平和であっていかないといけないですね」
去年7月48歳の若さでがんで亡くなった志水竜介さんの精霊船。生前、デニムや古着が好きだったことから「みよし」は、友人らがはいていたデニムの生地を集めて作り、船を流す家族ら30人は全員ジーンズをはいていました。
長崎バスを模した精霊船ならぬ、「精霊バス」。運転席に座るのは、林勇次さん(享年69)。今年3月、くも膜下出血のため、69歳で亡くなりました。
次男・林淳平さん(45):
「(父は)長崎バスに32年間勤めておりました。30年、無事故ということを誇りにしておりましたので、最後までバスで送ろうと思って、今、安全運転で進行中です」
沿道には、お盆に帰省した人や県外からの観光客もいました。
帰省客:
「今、東京に住んでいるんですけど、久しぶりに長崎に帰ってきて、爆竹が鳴っていたりとかそんなこと普通じゃありえないから、非日常を味わえて長崎に帰ってきて良かったなと思います」
千葉県から:
「(Q.何で長崎に)精霊流しを見るために。亡くなった人でも楽しめるなっていう感じがしました」
対馬市厳原町でも精霊流しが行われました。毎年、地元海運会社の船に精霊船を載せ、町の寺の住職による読経を受けて、沖へと送り出すのが習わしです。
港では、帰省した親戚同士が顔を合わせる光景も見られ、お盆を締めくくる地域の行事としてにぎわいを見せました。
鉦(かね)の音や爆竹の音が鳴り響く長崎のお盆の風物詩「精霊流し」。大切な人を失った悲しみを胸に、それでもにぎやかに、今年も故人の御霊は西方浄土へと送られました。