長崎大学は、国内で初めて、臓器移植前の肝臓を良好な状態に保つ保存方法による移植手術に成功したと発表しました。
長崎大学病院は5月、脳死ドナーから提供された肝臓を50代の男性患者に移植手術し、成功させました。
注目されたのは、移植までの肝臓の保存方法です。
これまで、移植用の臓器は低温の臓器保存液に浸し、冷却保存するのが主流でした。長崎大学病院が開発した「灌流(かんりゅう)保存システム」は、臓器を保存液に浸しつつ、機械を使って、肝臓の血管から酸素を混入させた保存液を循環させることで良好な状態で保存できます。
長崎大学病院肝胆膵・移植外科 曽山明彦准教授:
「門脈、動脈に管を装着して酸素化された保存液が流れる。温度は8℃から12℃に保つ」
また、エネルギーを生み出す肝臓内のミトコンドリアを保護できるほか、移植後に肝臓内に溜まった血液が、体内へ一気に流れ込むことによる臓器障害などのリスクも軽減できるといいます。
日本では、臓器移植率が低い一方、灌流保存が広まる欧米では、従来、移植手術への適用が難しいとされてきた状態の臓器も移植できるようになってきたといいます。
長崎大学病院肝胆膵・移植外科 曽山明彦准教授:
「欧米では移植数が明らかに増加しています。ドナーの数が変わらなくてもより移植につなげることができる。欧米で発展してきたような過程を、これから日本でも期待できるようになるのではないかと思います」
また、長崎県など立地的に遠方にある病院へ臓器を搬送する際も、システムがあれば臓器の状態を回復させることができるといいます。
長崎大学病院では、ほかの病院と連携し、システムを展開することで、実績を積みたいとしています。