長崎大学病院で食道がんが見つかったにも関わらず、患者に告知もなされないままおよそ3年半、治療をせず放置する医療事故が起きていたと大学が発表しました。
長崎大学病院・室田浩之副病院長:
「この度、本院におきまして重複がんの検査において早期食道がんが発見されていたにも関わらず約3年6カ月もの間、未治療のまま放置されていたことがわかりました。本院の過失でこのような事態を招いたことに患者さん、そのご家族の皆さんにおわびを申し上げます、誠に申し訳ありませんでした」
治療が放置されたのは、長崎市に住む70代の男性です。男性は2021年4月、長崎大学耳鼻咽喉科を受診し、下咽頭がんと診断されました。その後、他にがんがないか実施した内視鏡検査で、早期の食道がんも見つかりました。病院は、下咽頭がんの治療は実施したものの、食道がんについては、患者への告知や担当する消化器内科への連絡も行いませんでした。
去年4月に担当医が退職し、新しい担当医が去年10月、改めて過去の検査結果を確認したところ、2021年時点で食道がんの診断がなされていたことに気づいたということです。
食道がんを放置した理由について大学病院は2つの理由を挙げました。
長崎大学病院耳鼻咽喉科・熊井良彦教授:
「原因は2つございます。1つ目は進行していた下咽頭がんの治療を優先した結果、早期食道がんの存在を失念し患者さんへの告知、及び食道がんを担当する消化器内科への連絡を怠ったというのが1つ目の原因でございます。そして2つ目が診療科内のカンファレンスで情報は共有されましたが、情報が適切に管理されずその後の診療行動に結びつかなかった。また主診療科以外の診療科や部門による第三者的な管理が実施されていなかった」
大学は再発防止策として、今後、重要な所見が見つかった場合は、主な診療科とは別に、情報を第三者的に管理し、きちんと診療行動につながっているかを確認・管理するとしています。
長崎大学病院・室田浩之副病院長:
「患者さんは進行咽頭がんの告知を受けてから死の恐怖にさいなまれておりました。その中で当院の過失によりまして再びがんの恐怖にさいなまれることになりまして1日でも早く心穏やかな日々を送りたいというお気持ちと今後同様の事故が起きないように真摯に取り組んでいただきたいとおっしゃっておりました。本院としてはこのことを重く受け止めまして安全管理態勢の更なる強化に取り組んでまいります」
大学病院は患者に事実の説明と謝罪を行い、速やかに検査を実施。3年半前に診断されたときと比べ病変は拡大したものの、進行度は変わっておらず、転移もなかったということです。今後、患者と相談しながら治療を進めていくとしています。
長崎大学病院での医療事故は、2022年度に3件起きています。