産後のお母さんの心と体を癒やす「産後ケア」。育児で不安や疲労が募るお母さんが安心して育児できるよう支援する事業で、いまその重要性が叫ばれています。その取り組みや課題を取材しました。
運ばれてきたのは彩り豊かなワンプレートランチ。豆腐ハンバーグや魚の天ぷらなど、品数が多く、管理栄養士が栄養のバランスを考えて、子育てで忙しいお母さんのために作りました。
利用するお母さん・杉本美沙子さん(36)(3男2女の母・初利用):「栄養バランスとか量とかも母乳がよく出るようにとか体調がよくなるようにっていうのをすごく考えてくれているメニューなので、私もそれを食べてエネルギーをもらえるし、また頑張ろうって思えるようなごはんはやっぱり大事」
「産後ケア」は産後間もないお母さんの心身の健康管理や生活指導、赤ちゃんの発育チェック、授乳や沐浴の練習など助産師らが母子のケアをするもので、自治体が各産院や助産師会に委託しています。
長崎市では、日帰りの「デイケア」なら出産後1年以内に5回まで無料で利用できます。長崎市内のこちらの産院では、有料オプションで食事やアロママッサージなどでお母さんの心身を癒やします。
長崎市の杉本美沙子さん(36)は、9歳から0歳の5人の子どもを育てるお母さん。「一人で静かに過ごす時間が欲しい」と、出産した産院で初めて産後ケアを利用しました。
杉本美沙子さん(36):
「親とか主人とかに預けて買い物に行くとかもあったが、それとは全然感覚が違って、お産という命をかけた瞬間をサポートしてくれた方々が赤ちゃんを見てくれるというのは私にとっても心強いし私にとっても安心できる特別な場所」
お母さんが個室で一人の時間を過ごしている間、赤ちゃんは助産師や看護師がしっかり見ています。
看護師・谷内恵子さん:
「ママもおうちで大変だと思うので、病院に来て少し休憩する時間とかゆっくりご飯食べたりとかアロマ(マッサージ)を受けてもらって、少しリフレッシュして育児頑張ってもらえたら」
2児の母、店田未知留さん(34)は去年11月、2人目の出産直後に夫の転勤で知人もいない長崎にやってきました。
店田未知留さん(34)(2女の母):
「引っ越してくる前の県では産後ケア事業自体なかったので、長崎市にきてこんなに手厚いケアがあるんだってびっくりした。プロの方が(赤ちゃんを)見てくれるので安心して一人の時間を楽しめるのが一番かなと」
長崎市によると、産後のお母さんの約10%がメンタルに何かしらの不安を抱えています。
核家族化や親の高齢化、共働きが増えていることなどを背景に、産後のお母さんの心身のケアの必要性が注目されています。
助産師・山口由紀さん:
「大きい悩みを持っている方もいらっしゃるけれど、そうではなく日常のこまごましたことですごく皆さん気持ちを張り詰めて育児されている。大事な赤ちゃんに何かあっちゃいけないと。頼れるところはいっぱいあるんですよと知ってほしい」
一方で、自治体ごとに補助に差があり、里帰り出産などで利用した市外在住者は補助が適用されません。(※近隣の市町で提携しているところもあり)
助産師・山口由紀さん:
「みんなが気楽に気軽に産後ケアを利用できるようになれば。(赤ちゃんの)月齢も問わず、所属する自治体も問わず、どこでも希望するところで利用出来るようになるのが理想」
長崎市子育てサポート課によると、昨年度、市内では日帰りのデイケアが166件、宿泊は65件の利用がありました。今年度から助産師が自宅に訪問する「アウトリーチ型」の補助も始め、多くのお母さんが利用しやすいように支援の幅を広げています。
長崎市子育てサポート課保健師・鈴木佑梨さん:
「長崎市民が里帰りで違う自治体に行った時には料金の補助があるのと、市外の方から里帰りで長崎市に帰ってこられてる方については別の事業になるけれど助産師さんの訪問を受けられることもあるので相談してほしい。
産後ケア事業は、元々『心身の不調がある方』とか『強い育児不安がある方』という条件があったが、昨年から希望される方は皆さんこれを受けていただいて大丈夫という形に制度が見直された。ぜひ一人で悩まずにまずお気軽に使っていただければ」