体重110キロ。身長181センチ。普段は報道記者として働く中嶋航大記者(32)が、おすすめのグルメ情報を街の人に聞き込み取材。街のリアルな声をもとに長崎の「うまい」を探し歩きます。
「満腹記者がゆく!」今回の舞台は西海市です。大瀬戸町の砂浜で、気になる人影を発見しました。女性が砂を掘っているようです。
満腹記者:
こんにちは~、突然すみません、何をしているんですか?
女性:
”砂浴(さよく)”といって砂に入って体を癒やすというか、デトックスするのが好きで
話を伺うと、女性は去年、福島県から家族で引っ越してきたそうです。その動機が、自然の砂の中に入る「砂浴」なんだそうです。
満腹記者:
全然関係ない話題なんですけど
と本題を切り出すと。コーナーをご存じなのか、
女性:
ごはん屋さんですか。「maru_tamo」さん開いていないかな?「maru_tamo」さんのスパイスカレー。おしゃれよ、店長が優しいし、人がいっぱい集う場所。有名ですから行ってください
ということで、満腹記者がゆく!今回は福島県から移住してきた女性イチオシ!西海市の「maru_tamo」に決定です。
おすすめの店があるのは、大瀬戸町雪浦。約4.6キロ、車で10分の移動です。
満腹記者:
雪浦地区にやって来ました。近くに小学校や民家が立ち並ぶエリアです。お店がこちらですね
2階建ての古い民家を改装したような建物の1階がお店のようです。壁の黒板に「スパイスカレーmaru_tamo」とチョークで書いてあります。いつものように直接取材交渉です。
満腹記者:
無事に取材OKいただきました。入った瞬間にスパイスカレーの香りが漂っています
「maru_tamo」があるのは、雪浦の情報提供や交流の場などが集まるコミュニティスペース「ゆきや」の1階です。店長の井手 保さん(57)が2022年5月にスパイスカレー専門店としてオープン。一人で切り盛りしています。
井手さん:
小さい頃は、この通りが商店街だったんですね。その中でもこの店は何でも屋さん。やかんだったり、バケツだったり、ほうきだったり、ちょっとした駄菓子を置いていて。
カウンターの商品ケースの土台部分に、タイルで描かれた「ハトヤ」という文字。全面的にリノベーションしていますが、ここは当時のまま残しています。
満腹記者:
メニューがこちらですね
カウンターの上に下げられた小さな黒板の手書きのメニュー。カレーは「スパイス麻婆茄子」、「鶏白湯海老キーマ」、「鯛出汁チキン」の3種類。週替わりだそうです。2種、3種のあいがけで注文できます(2種1,500円 3種1,600円)。
井手さん:
そうですね、もう一つですね、トッピングで「鶏軟骨キーマ(300円)」。オープン当初から出しているドライキーマカレーです
満腹記者:
じゃあもう、あいがけ3種とキーマをトッピングで4種類カレーを、よろしくお願いします
4種類すべてのカレーを味わうことにしました。いずれも初めて聞くカレー、期待が高まります。
井手さん:
お待たせいたしました。「スパイス麻婆茄子・鯛出汁チキン・鶏白湯海老キーマ」、上に載っているのがトッピングした「鶏軟骨キーマ」です。(あいがけ3種+鶏軟骨キーマ1,900円) 別々に食べてもいいんですけど、最終的には副菜も含めて混ぜていただいてもいいです。
満腹記者:
まずは茄子がゴロゴロ入った麻婆茄子から。茄子がゴロッとしています。ご飯は細長い形のバスマティライスです。茄子がトロトロすぎてびっくりしたんですけど、香りがものすごく鼻から抜ける。最後に唐辛子の辛さが、スパイスめちゃくちゃ濃厚です。結構辛いかも
店に常備しているスパイスは、約30種類。井手さんが特にお気に入りというコリアンダーをはじめ、クミン、カルダモンなど、カレーごとに配合を変え、複数のスパイスで香りを調整しています。
食材のおいしさを際立たせるため味付けは塩だけ。小麦粉を使わないルーは、さらりとした軽い口当たりです。パラパラとしたバスマティライスとよいコンビネーションです。スパイスの香りがふわっと立ちのぼります。
カレーは週替わり。出合える味は一期一会です。トッピングの鶏軟骨キーマだけは、オープン当初から変わらない定番カレーです。
満腹記者:
うまっ!軟骨のコリコリ食感もあって、かめばかむほどスパイスの香りがどんどん口の中に。何より味付けがご飯が進む塩加減
最後はおすすめの食べ方、4種のカレーを混ぜます。混ぜ合わせることで、味わいが大きく変わります。辛みが強かったりうまみが強かったり、海老の風味を感じたり食感が良かったり、混ぜることでそれぞれのカレーの良さが互いに際立たせ合い、全く違うカレーの味わいです。
井手さん:
皆さんには、「スパイスカレーではなく”創作スパイスカレー”」と紹介しています。本来のスパイスカレーじゃないと思います。私流に和風にしたり中華系にしたり
実は井手さん、開業まで飲食業界の経験はありませんでした。以前は、航空系の仕事、航空支援業務に就いていました。
井手さん:
主は羽田空港でした。私はUターンで帰ってきた。サラリーマンも楽しくて仕事は楽しかったんですけど、中間管理職になって。飲食をやろうとは思っていなかったんですけど、たまたま声をかけていただいた方がいて、地域活性化や自分が生まれた土地が寂しいなという思いがあったのでやってみようかなと
約30年務めた航空会社を辞め、ふるさと西海市へUターン。元々、興味のあったスパイスカレー専門店を出すことを決め、退職からおよそ3カ月間で大阪を中心に約40軒の専門店を巡り、独学で味を磨いたそうです。
井手さん:
この通りに10軒以上のお店があったのに、寂しいなとか無くなっていくんじゃないのかなとか。そこを変えられればという思いもあって始めた
すると窓の外から「おーい」という声が掛かりました。学校帰りの小学生たちです。店に顔を出す子どももいるそうです。
井手さん:
土曜日は、小学生2人がカレーを食べたいから「手伝わせて」と言って来ます。僕も出身が雪浦なので近所のおじいちゃん、おばあちゃんも知っていますからよく来てくれますし、僕がこんな髪型の風貌なので来てくれるんでしょう。うれしいことですね
この日、店に立ち寄った常連の男の子。井手さんが作るカレーが好きなのだそうです。
満腹記者:
カレーは好き?
小学生:
保ちゃんのカレーが好き
満腹記者:
ほかのカレーと何が違う?
小学生:
あんまりわかんない
井手さん:
そこで言うんだよ”愛情”だよって
スパイスの香りとともに広がるのは、人の輪と、街の温もり。ふるさとに戻り、新たな挑戦を始めた井手さん。そこには、かつてにぎわった通りをもう一度元気にしたいという思いがあります。
週替わりのカレーも、訪れる人との出会いも、『一期一会』。子どもたちが声をかけ、近所の人がふらりと立ち寄る。そんな西海市の温かさにも触れながら、今週も満腹、満腹!
井手さんが、「同じカレーは作れない」という言葉を繰り返していたのが印象に残りました。斬新なスパイスカレーのアイデアは、食材の仕入れやスーパーでの買い物中に思い付くそうです。これまでのメニューや営業日、イベント出店の情報は、店のインスタグラムで紹介しています。
スパイスカレー maru_tamo(マルタモ)
住所 西海市大瀬戸町雪浦下郷1241
営業 11:00~15:00
休み 月曜・火曜・水曜 不定休あり
インスタグラム @maru_tamo