長崎県西海市の大島にある県立大崎高校。今春の県王者で、第2シードとして初の夏の甲子園出場を狙うこのチームには、遠く千葉県からやってきた一人の選手がいます。今年春から高校野球に導入されたDH(指名打者)制での活躍が期待される、3年生の石川護之選手です。
石川選手は千葉県の出身ですが、あえて遠く離れた長崎の大島へとやってきました。その背景には、家族の深い歴史があります。大島は石川選手の祖父母が生まれ育った地。かつて炭鉱で栄えた時代には、彼の曽祖父が町長のような役割を務めていたといいます。
父親から「そういう血もお前には入っているんだ」と背中を押され、石川選手は大崎高校への進学を決意しました。千葉を発つ際、父からかけられたのは「一人前の漢になって帰って来い」という言葉。その重みを胸に、石川選手は海を渡りました。
現在、大崎高校の選手は全員が寮生活を送っています。寮生活のため、祖父母である數之さん(80)と多喜子さん(79)も、孫とはなかなか会うことができません。
祖母の多喜子さんは、寮母に孫の様子を尋ねる日々を送りながらも、「(孫の活躍が)私の生きる活力になっています」と笑顔を見せます。かつて地元の強豪校への進学も考えられた中で、自分たちの住む島を選んでくれた孫の成長に、「もう3年生かと思えば涙が出る」と感慨をにじませます。
石川選手は、場面に応じたバッティングが魅力の強打者です。今春の九州大会では「2番・DH」として出場し、選抜出場校を相手に貴重なタイムリー三塁打を放つなど、県勢唯一の初戦突破に大きく貢献しました。
大崎高校は2020年の独自大会で優勝したものの、コロナ禍により甲子園への道は断たれました。その後も上位進出を果たしながら、あと一歩で頂点を逃す悔しさを味わってきました。
石川選手は、自身のルーツであるこの島への思いをこう語ります。
「大崎高校初の夏の甲子園に行って、この島を盛り上げたい。色んな人たちや中学生が『大崎高校のあるこの島に来たい』と言ってもらえるように、この夏本当に頑張りたい」
千葉から来た「漢」が、家族の、そして島の期待を背負い、大島に新たな歴史を刻むための夏に挑みます。