長崎に原爆が投下された1945年に被爆者約5800人の症状を調査・分析した論文が長崎大学に寄贈されました。
長崎大学に寄贈された「長崎に於ける原子爆弾障害の統計的観察」。長崎大学の前身、長崎医科大学第一外科の医師、調来助博士(享年89)が書いた論文です。
博士の孫で、核兵器廃絶長崎連絡協議会の会長を務める長崎大学の調漸名誉教授(69)が寄贈しました。
長崎大学・調漸名誉教授(69):
「彼(祖父)は毎日夕食を食べて午後7時半か8時頃に寝るんですよ。午前3時ごろに起きてこんなこと(論文の作成)をずっとやってましたね」
長崎医科大学で被爆した調来助博士は、医療チームを結成し、懸命に被爆者の救済に当たりました。原爆の投下からまもない1945年10月から11月にかけ被爆者約5800人の初期症状を調査・分析し、まとめたのが今回寄贈された論文です。1953年にはアメリカの軍医雑誌に英訳され掲載されました。
長崎大学・池松和哉医学部長:
「今後、(論文が)語り部になっていくという意味では、原本を頂いたのは非常にありがたいし、我々はそれだけ責任を持たなければいけなくなったと思ってます」
原爆放射線の健康影響を医学的、統計学的に示した世界最初の文献とされ、原爆による死亡率や死亡時期、外的損傷、放射線病について4編に渡り記しています。
長崎大学・調漸名誉教授(69):
「約7万人が亡くなったとか、その中身がここ(論文)にあるんですよね。データとして整理された論文の持つ迫力みたいなものがまた別にあると思うんですよ。そういうのが伝わるといいのではないか」
論文は9日まで、長崎大学坂本キャンパスで開催中の「原爆被災写真・資料展」で展示します。