原爆で鐘を失ったままの長崎市の浦上天主堂にアメリカのカトリック信徒らから寄贈された新たな鐘がお披露目されました。
浦上天主堂に贈られた直径約80センチ、高さ66センチの青銅製の新たな鐘です。旧浦上天主堂には、かつて大小2つの鐘がありましたが、1945年8月9日の原爆投下によって左側の塔にあった小鐘は大破しました。その後も、浦上天主堂の左の鐘楼は鐘のないままです。
その左の鐘楼に鐘を寄贈したのは、アメリカウィリアムズ大学のジェームズ・ノーラン・ジュニア教授とアメリカ各地のカトリック信徒ら約430人です。ノーラン教授の祖父は世界初の核爆弾を開発したマンハッタン計画に関わった医師でした。ノーラン教授は1年以上かけてアメリカ各地で原爆に関する講演を行い、約10万5000ドル、日本円で約1535万円の寄付を集め、鐘の寄贈に至りました。
5月15日にカトリック長崎大司教館であった記者会見には、ノーラン教授もリモートで出席しました。
ウィリアムズ大学ジェームズ・L・ノーラン・ジュニア教授(63):
「この鐘の寄贈は戦争による傷の癒やしと世界平和を私たちが歩んでいくためのもの」
カトリック長崎大司教区中村倫明大司教:
「アメリカの人によって造られて投下された原子爆弾によって破壊された鐘を、アメリカのカトリックの皆様方が復元し、寄贈して下さることは、共に世界平和の実現に向かって歩んで行けるんだという大きな希望の証を示すこともできるのではないかと考えます」
原爆を投下したアメリカと被爆地・長崎。かつて「加害」と「被害」の立場にあった両国が、いま共に「平和のシンボル」として戦前のように大小の鐘の音を再び響かせようとしています。
ウィリアムズ大学ジェームズ・L・ノーラン・ジュニア教授(63):
「浦上天主堂に二つ目の鐘が取り付けられ、右側の鐘と共に戦争終結と核兵器の廃絶を願って鳴り響きますように」
カトリック浦上教会山村憲一主任司祭:
「(大小の)鐘が二つそろって鳴り響くということは、更に私たちにとって平和のためにこれからお祈りしましょうという呼び掛けをしてくれているような響きになる」
5月24日(日)から6月1日(日)まで浦上天主堂原爆遺物展示室で新しい鐘を展示し、7月17日の祝福式のあと、鐘楼に設置される予定です。
カトリック長崎大司教区中村倫明大司教:
「本年は被爆80年です。この節目の時に当たり、新しい鐘の音を合図に絶望や分裂ではなく希望と平和に満ちた新しい世界のために歩み出すことを願います」
被爆80年を迎える今年8月9日、原爆がさく裂した午前11時2分に初めて、大小二つの鐘が鳴り響きます。