ハンガリーのシュヨク・タマーシュ大統領が初めて被爆地・長崎を訪れました。被爆の実相に触れ「人類が尊厳を持って歩み続けるための唯一の道は、平和の道である」とメッセージを残しました。
シュヨク大統領(69)は午後2時、原爆資料館を訪れ、大石知事と鈴木長崎市長が出迎えました。
シュヨク大統領は去年3月に大統領に就任。大阪・関西万博で行われた「ハンガリーナショナルデー」に出席するために初めて来日しました。自らの意向で長崎訪問が実現しました。ハンガリーの大統領が長崎を訪問するのは初めてです。
大統領は原爆資料館の井上琢治館長の案内で被爆当時のジオラマや写真などの説明を受けながら約30分間館内を見学しました。
見学の最後に芳名録に「原爆投下によって命が奪われた無辜の犠牲者の方々に、深い悲しみと追悼の意を表します。その耐え難い苦しみは、私たちすべてに向けられた永遠の警鐘です。人類が尊厳を持って歩み続けるための唯一の道は、平和の道であると信じています」とハンガリー語で平和への思いを記しました。
井上館長は市が製作した被爆写真集と、ハトをかたどったピンバッジを贈り、大統領はその場でピンバッジを胸に着けました。大統領からは、「午前11時2分に、もう二度と止まらないように」との願いを込めて、時計が贈られました。
このあと、松山町の平和公園を訪れた大統領は祈念像に花輪を捧げ犠牲者の冥福を祈りました。
鈴木長崎市長:
「原爆資料館ではですね、被爆の実相に触れていただきまして本当に胸が締め付けられるというような、そういう気持ちを語っておられました。こういう被爆の実相は世界中の指導者が、これは知るべきだということもおっしゃっていただきました。このような形で長崎の思いに共感いただきそして平和への思いを共有いただいたことを大変うれしく思っております」
続いて大統領が訪れたのは、原爆の被害を受けた浦上天主堂です。
山村神父の説明を受けながら内部を見学し、被爆の損傷を受けた「被爆マリア像」と対面しました。像を静かに見つめていた大統領の表情は、原爆がもたらした惨禍の重みを受け止めているようでした。
シュヨク大統領:
「歴史で壊されたものは神様が返してくれるというふうに理解しています。ここで信仰を強め命は死や破壊よりも大切であることを示しましょう」
約3分間祈りを捧げたあと、修学旅行で訪れていた子どもたちと握手を交わし、笑顔で浦上天主堂をあとにしました。
シュヨク大統領は、もう一つの被爆地である広島市を25日(日)に訪れています。