実写を超えたリアリティーを刻む異色の画家の作品が並びます。超絶技巧の鉛筆画の展覧会が県美術館で開かれています。
鉛筆による細密描写で現代アート界に衝撃を与え、2013年に63歳で急逝した画家、吉村芳生さん。鉛筆で克明に描き写す制作スタイルとその描写力で、見る人に驚きや感動を与える作品を数多く残しました。
初期から晩年までの約500点を展示した「超絶技巧の鉛筆画 吉村芳生展」、その魅力に迫ります。
「取扱説明書が欲しかった。ものすごくしつこい粘着質な性格の人だった」
そう語るのは芳生さんの妻、春美さんです。
故・吉村芳生さんの妻・春美さん(62):
「出会った頃にはまだ色鉛筆の作品は描いていなくて白黒の作品を主に描いていた」
芳生さんは、故郷の山口県に戻ったのをきっかけに、モノクロームで表現することに限界を感じはじめ、1990年ごろから色鉛筆で描いた花の絵を制作するようになります。
東京ステーションギャラリー・富田章館長(62):
「120色の鉛筆を使ってこんなにきれいに描ける人はなかなかいない。120色の色鉛筆をその場に応じて微妙に使い分けていくというのはものすごい技術が必要」
芳生さんの作品の中で妻・春美さんの一番のお気に入りはコスモス。
妻・春美さん(62):
「コスモスの作品としては目立たない地味な作品だが、光の感じ。花びらに葉っぱの影がうつっているところや、光とか風とかで揺らぎを感じられるような作品。そこが私としてはとっても大好きなところ」
芳生さんは、自宅の一室で8時間ほど制作にあたっていたといいます。
妻・春美さん(62):
「気分や体調によって、時間やタッチが変わるとか、そういうことは一切なかった」
毎日必ず決まった時間に仕事を始め、決まった時間に仕事を終えていたといいます。
妻・春美さん(62):
「若い頃は作品に対しての評価もそんなに高くはなかった。それでも自分としてはこの作品は良い作品だと信じ続けて、ずっと作家として作品を作り続けていた」
企画展「超絶技巧の鉛筆画吉村芳生展」は5月12日までです。入場料は一般1200円。小中高生は600円。小学生以下は無料です。