NCCと長崎県の協働企画「未来へのエール」。今回は、大人の代わりに日常的に家族の世話や家事をする「ヤングケアラー」について考えます。
3月9日(土)、大村市で開催されたこども食堂です。こども食堂は、無料、または安価で食事を提供する取り組みで、地域の子どもたちの交流や食育などの場にもなっています。(まつなぎやでは月一度開催、大人は500円)
女の子(小5):
「辛さがちょうどよくておいしい」
女の子(小5):
「(この場所は)リラックスできる」
まつなぎや・山田弘美さん:
「こだわりは愛情と、あと(具材を)細かく刻んでいる。苦手な野菜だったり全部食べられるように」
こども食堂が開かれたこの場所は大村市竹松本町の「まつなぎや」。去年2月に開所したヤングケアラー支援施設です。「ヤングケアラー」とは?
山田弘美さん:
「18歳未満で、大人が担うような介護や看護、育児を担っている子どもたちのこと」
家庭での負担が大きく学業や生活習慣に影響が出たり、部活や友達と遊ぶ時間がなく孤立してしまったりする課題を抱える「ヤングケアラー」。
「まつなぎや」では、ヤングケアラーの早期発見や支援につなげようと、来所や電話などで相談を受け付けたり、子どもの居場所を提供しています。最低2人のスタッフが常駐。子どもたちと信頼関係を築きながら、些細な様子の変化に目を配ります。
山田さん:
「距離感に気を付けている。あんまりガツガツいかないように。ガツガツいきたい気持ちはあるんですけど、様子を見ながら遠目で見ながら」
「(ある子が)来て早々イライラしていて、どうしたのかなと思ってちょっと話を聞いたらその内容がヤングケアラーだったという潜在的に隠れているヤングケアラーの発見もあった」
まつなぎやを運営するNPO「Schoot(スクート)」のヤングケアラーコーディネーター、山田弘美さん(54)。県内の病院の精神科で看護師として働いていましたが、退院した子どもたちが自立できない現状を目の当たりにし、「地域に居場所をつくろう」とまつなぎやを立ち上げました。
山田さん:
「病院とかでも、何カ月も経ってやっと自分の気持ちを言える子どもにも何人も接してきたので、少なくとも居場所は必要だなと。本当に救おうと思ってるならとつくった」
月に一度、ヤングケアラー当事者とオンラインや対面で語る場を設けています。しかし…。
山田さん:
「まだ全然参加ゼロの状態。でもやっぱりそれは全国見ても難しい。(当事者のための場を)開いてはいるけれど、実行するには人が集まらない」
県が今年度初めて行ったヤングケアラーに関する調査によると、県内の公立学校に通う小学生の4.5%、中高生の3.6%が「自分が世話をしている家族がいる」と回答しました。
県福祉保健部こども政策局こども家庭課こども・女性支援班・土井春菜主任主事:
「子ども自身にヤングケアラーという自覚がないケースももちろんあるし、周囲に知られたくないとか知られないようにしているケースもあるかと思うので、潜在化している場合もあるかなと」
少子高齢化や核家族化を背景に、個人にかかる介護や家事などの負担は大きくなっています。県は今年度(去年4月)、ヤングケアラーも含め、ケアラーを社会全体で支える仕組みの構築に取り組む「ケアラー支援条例」を九州の自治体で初めて、全国の都道府県では5番目に施行しました。
一方で、児童生徒の間での「ヤングケアラー」の認知度は不十分で、県は来年度、漫画など子どもたちにもわかりやすい広報啓発に取り組むとしています。
土井春菜主任主事:
「周りに知られたくないとか相談したくないというヤングケアラーもたくさんいらっしゃると思う。そういったいろんな意味でフラットなヤングケアラーの知識を正しい知識を広げていって、お世話をしていること自体はすごく素晴らしいことだけど、つらい時や悩んだ時はいつでも周りに相談していいんだよという雰囲気を児童生徒の皆さんへの普及啓発とかいろんなことを通して社会の雰囲気をつくっていくことが大事かなと」
まつなぎや・山田弘美さん:
「まつなぎやは『間をつなぐ』っていう意味が入っている。何か立ち止まったり悩んだりした時にここでエネルギーを溜めて次のステップにいける場所になったらすごくいいなと」