SNSがバズっていると話題の長崎バイオパークの広報に密着。動物の魅力を伝え、集客にもつなげるその活用法に迫ります
短編動画の共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿された動物たちの「ほのぼの動画」。中には再生回数が5000万回を超えるものもあります。フォロワーはおよそ190万人。去年とおととし、国内で活躍したクリエイターを表彰するティックトックアワードの「Animal Creator of the year(アニマル クリエイター オブ ザ イヤー)」に2年連続でノミネートされました。
世界最大の動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」のチャンネル登録数は50万人を超えています。こうしたSNSの反響もあり、コロナ禍が収束した去年(2023年)の入園者数は過去15年で最多に。SNSがきっかけでバイオパークに入社した飼育員もいます。
“日本一バズっている動物園”と言われるバイオパーク。その秘密に迫ります。
SNSを担当するのは、長崎バイオパークの広報、春岡俊彦(はるおか・としひこ)さん27歳と取締役CMO=最高マーケティング責任者の神近公孝(かみちか・きみたか)さん48歳です。
バイオパークは2007年に公式ユーチューブチャンネルを開設し、その翌年(よくねん)ごろから神近さんはSNSの運用に携わってきました。
当時は動物園のイベントの告知用に動画を上げていただけでしたが、5年ほど前からは本格的な“映像コンテンツ”としてSNSに力を入れています。そのきっかけとなった一つが、2014年8月17日に投稿したカバがスイカを豪快に頬張る映像がバズり(話題が拡散し注目が集まる)9年5カ月後の現在およそ1億6900万回再生されています。
一方、元々飼育員として20歳からバイオパークで働く春岡さん(27)。コロナ禍で県外から来られなくなったお客さんに「SNSを通じて動物の魅力を発信したい」と4年前(2020)広報に異動しました。
春岡さんの加勢もあり、コロナ禍で急激にフォロワー数がアップ。ティックトックの公式アカウントのフォロワーは2020年4月時点のおよそ30万人から現在のおよそ190万人に。
インスタグラムの公式アカウントのフォロワーはおよそ3000人から6万人を超えました。
元飼育員だからこそ分かる動物との安全な距離感で、それぞれの生き物の魅力を最大限とらえています。ユーチューブ用の長尺の動画撮影に同行させてもらいました。
春岡さんは、出演者側にも回ります。今人気だと言うビーバー。そのお散歩動画を撮影します。飼育所から外に出て、枯れ木を拾って帰っていくビーバーたち。ひたすらカメラで回します。編集は映像制作会社に委託しています。柵や檻がなく来園者が通る通路に動物を放すことができるバイオパークだからこその撮影風景です。
動画をバズらせる秘訣は、その魅力を高めようと努める2人の日常的な“雑談”にもありました。
「(神近)最近の(ユーチューブ)動画で最初の動きの再生時間が長いのは、ビーバーが出てきている動画であったりとか、お世話動画が最近良いかな」
「(春岡)積極的に飼育員に出てもらいたい」
「(神近)園長の動画なんかも結構いいもんね。
(春岡)ずば抜けていいです。虫のコンテンツ全然伸びないのに園長が出たら伸びるっていうね。
(神近)人っていうキャラが応援したくなるとか、そこに共感するとかそういう部分が重要なのかな」】
「(神近)非常に重要な基礎の部分。それを日常的にやれているというのがうまくポイント」
「(春岡)きのうの動画は?って感じ」
「(神近)とりあえず伸びが気になるから見て、気になったことをここで言ってる。他の作業しながらとか」】
動画コンテンツが大好きな2人。春岡さんはプライベートでもユーチューバーとして、休日、出掛けた時の動画を自身のYouTubeチャンネル「飼育員の休日」にあげています。
春岡さんは、出勤した日は必ず午後0時半から1時間園内の動物たちの様子を生中継で見ることができる長崎バイオパークの「インスタライブ」に取り組んでいます。
園内を周って、視聴者に園全体の魅力も届けています。動物の生活がより詳しく分かる飼育員の解説。しかし、こうした飼育員の出演調整は簡単ではないと言います。
こうしたSNSの活用の仕方について、県の内外の動物園や水族館から問い合わせもあるそうです。4頭のジャイアントパンダが見られる和歌山県の「アドベンチャーワールド」もその一つです。
春岡さんたちの継続力と分析力とともに、園一体となって魅力を発信するバイオパーク。2024年の展望は?
春岡俊彦さん(27)
「今年は飼育員が『これやりたいんだけどできない?」っていうのを企画としてやる」
「飼育員の『やりたいんだけどできない』っていうのをかなえながら
『バイオパークってこういうことやってるよ』っていうのを視聴者の方に見ていただけたら」