スイス・ジュネーブにある国連軍縮研究所の所長が長崎を訪れ、「平和と軍縮における対話の重要性」を訴えました。
国連軍縮研究所ロビン・ガイス所長:「被爆者が経験したことは単に個人の体験談や国家的な悲劇に留まりません。全人類にとっての国際社会の教訓です」
21日、「ベネックス長崎ブリックホール」で開かれた市民講座には、被爆者や大学生ら約50人が集まりました。初めて日本を訪れた国連軍縮研究所のロビン・ガイス所長は、世界の安全保障環境は急速に悪化していると話し、核兵器を取り巻く状況について、核保有国が核システムをAIやサイバー技術、宇宙開発技術などといった新しいテクノロジーと統合し、核兵器が近代化してきていると指摘しました。
「こういったことは、誤算や誤解、特定の出来事や行動によって事態が悪化したり、制御不能となったりするリスクを高めます」
また「平和な社会の実現に向けて、幅広い世代間での対話や異なる意見を持つ人と対話を重ねることなどが急速に求められていて、重要」と話しました。
「原爆を経験した世代の物語を忘れずに伝えていくことは私たちの責任です。対話や様々な方法を通して次の世代へと語り継いでいかなければなりません」
第19代高校生平和大使 安野伊万里さん(25):「意見が違う相手を恐れずに対話することや、互いの意見や利害の相違もありつつも、耳を傾けようとするその行為こそも対話の一歩なんだということを今日学びました」
ガイス所長は22日、鈴木長崎市長を訪問し、核兵器のない世界を目指す上で長崎市や大学などと密接に協力していきたいと話しました。
国連軍縮研究所ロビン・ガイス所長:「核兵器の脅威は世界的なスポットライトを浴びている。核使用の脅威は冷戦が終結して以降、最も高くなっていると思います。これからも共同研究で協力していきたい。互いの機関で研究者を派遣し合うなどより深く一緒に協力できるのが楽しみです」
会見では「被爆から80年という月日が流れているにもかかわらず、今も核の脅威は消えていない」とする一方、「核に対する考えは変わってきている」と話しました。
「核拡散のリスクや圧力が高まっていて、『核の傘』や『核抑止』といった概念が今日では疑問視されるようになっている。多くの国々が自国の核政策や戦略を見直し始めていて、まさに今が過渡期といえるでしょう」
核軍縮に向けて重要なことは、「七転び八起きの精神で諦めず働きかけていくこと」だと強調しました。