長年、市民に親しまれてきた長崎市の公衆浴場「徳の湯」が、3月31日に惜しまれつつも、68年の歴史に幕を下ろしました。
濵田清志さん(90):
「安堵感と、申し訳ないという気持ちですね」
(寂しいですか?)「そりゃあ、70年もしてたら寂しいですよ」
長崎市上野町の公衆浴場「徳の湯」。1957年(昭和32年)に創業し、以来68年、地元の人たちに親しまれてきました。浴室には3種類のお風呂。昭和レトロな雰囲気が残る、どこか懐かしいノスタルジックな空間です。最後の営業日には、これまでの感謝を込めて400円の入浴料が無料となり、多くの常連さんでにぎわいました。
お客さん:
「足を投げ出されるやろ。家庭のお風呂にはない醍醐味がある。銭湯というのは。この人は約70年、最初から来てるんだから」
お客さん:
「中学生の頃から。(当時は)ここに10人くらい入ってた」
お客さん:
「『芋の子を洗う』という表現がぴったりよ」
「徳の湯」の2代目、濵田清志さん、90歳です。1964年に父親から継いで以来、夫婦で銭湯を切り盛りしてきました。
濵田清志さん(90):
「昔はですね、(銭湯が)90軒近くありました、長崎市内に。多かったんですけど昔は。それでも、どこの浴場も黒字でしたけどね。人口が多かったから。昔はですね、料金も安かったですけど平均して200人近く(来ていた)」
(今では?)「今では60人を切る時もある」
お客の減少や自身の高齢化、燃料価格の高騰や設備の老朽化もあり、閉店を決めました。
濵田清志さん(90):
「体がね言うことを聞けば今年いっぱいまではやろうと思ってたんですけど、浦上地区にはうち1軒しかないですもんね。だから申し訳ない気持ちはあります」お客さん:「寂しいです。もっと長くしてほしかったですね」
お客さん:
「寂しいね。涙を出さないようにしてます。おじちゃんとおばちゃんにはお世話になりました」
最終日には、腰のけがから退院したばかりの妻・スミ子さん(88)もやってきて、濵田さん夫婦に常連さんから長年の感謝を込めて花束が贈られました。
妻・スミ子さん(88):
「皆さん本当にありがとうございます。毎日ニコニコ笑ってお風呂に入っていただいて、優しい言葉をかけていただいて」
けがをする以前は、番台はスミ子さんの定位置。銭湯を見守り続けてきた思い入れのある場所です。
妻・スミ子さん(88):
「ここはね、私の人生で一番良かった所だと思う。楽しかった」
濵田清志さん(90):
(番台を守り続けてきたスミ子さんに)「それは感謝感激」
戦後の長崎で地元の人たちの疲れた体を癒やし、温もりを与え続けてきた公衆浴場「徳の湯」は、笑顔に包まれながら68年の歴史に幕を下ろしました。
濵田清志さん(90):
(約70年間、営業を続けてこられたのは?)「それはお客様のおかげです。やり切ったという気持ちですね。その一言よ」