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2024/9/21(土) 09:01

【詳報】すべての「被爆体験者」に被爆者と同等の医療費助成、岸田総理が表明 一方、地裁判決受け県と長崎市は控訴 原告側も控訴へ

     長崎に原爆が投下された際、国が定める地域の外にいて被爆者と認められていない「被爆体験者」について岸田総理は21日、年内早い時期から被爆者と同等の医療費助成を行うと表明しました。

     一方、被爆体験者の原告の一部を被爆者と認めた今月9日の長崎地裁判決を受けて、国の判断を踏まえて県と市は控訴する方針で、原告側も控訴する考えを示しました。

    ■総理が被爆体験者に約束した「合理的解決」

     長崎原爆の日の8月9日、被爆体験者に「合理的解決」を約束していた岸田総理。けさ総理公邸で武見厚労大臣同席のもと、大石知事と鈴木長崎市長と会談し、被爆体験者に新たな救済策を伝えました。

     岸田総理は被爆体験者を対象として行われている現行の事業を抜本的に見直し、「これまで被爆体験者とされてきた方々全員を対象として精神疾患の発症は要件とせず、また精神疾患に関連する限定的な疾病に限らず、幅広い一般的な疾病について、被爆者と同等の医療費助成を行う事業を創設する」と述べました。

     「被爆体験者」は現在、「原爆の放射線による直接的な身体への影響はない」とされ、被爆体験を原因とするうつ病やパニック障害、不眠症など精神疾患が認められないと医療費の助成を受けられません。

     また、年1回の精神科での受診が必要なほか、助成される対象疾病は精神疾患とその合併症、胃がんや大腸がんなど7つのがん(去年4月~)に限られています。

     岸田総理は「精神科の受診を不要とするなど利便性を高めた端的な医療費助成事業とする」「年内できるだけ早い時期からの医療費から助成を適用する」と述べました。

     医療費の助成対象は、被爆者と同等とし、遺伝性疾病や先天性疾病、虫歯などを除くすべての疾病に拡大されます。

    ■原告一部勝訴の地裁判決への対応は? 

     一方、被爆体験者の原告44人が被爆者と認めるよう求めた訴訟で、長崎地裁は今月9日、東長崎地区の旧矢上村、戸石村、古賀村で放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと認め、東長崎地区に住んでいた原告15人を被爆者と認定。被告の県と長崎市に対し、被爆者健康手帳の交付を命じました。訴訟には被告側の補助参加人として国も参加しています。

     岸田総理は判決を精査した結果として、武見厚労大臣が大石知事と鈴木市長に「控訴せざるを得ない」との考えを伝えたと明かしました。大石知事と鈴木市長は「重く受け止める」と答えたということです。

    ■国は「控訴せざるを得ない」判断理由は?

     武見厚労大臣は控訴の判断に至った理由について、「原告44人については、先行訴訟で最高裁まで争われ、手帳を交付しなかった県と市の処分は適切であるとの判決がすでに(2019年までに)確定している」と説明しました。

     また、今回の長崎地裁判決で15人を被爆者と認める重要な根拠として用いられた1999年度の県や長崎市などの証言調査について、最高裁で確定した先行訴訟では「バイアスが介在している可能性が否定できないとして事実認定の根拠として用いていなかった」としたうえで、「司法判断の根拠に対する考え方が先行訴訟と、今回の判決で異なる」と述べました。

     武見厚労大臣は「(地裁判決は)根拠が不確かな要素を組み合わせて個別の原告に対して示された司法判断であり、同じ事情を持つ他の同様の地域に関する考え方が示されていないために、この被爆者健康手帳を交付するべき統一的な基準を作ることが難しく、(『黒い雨』を浴びたと訴えた原告84人全員が被爆者と認定された2021年の)広島高裁判決と比べても、本判決における根拠に基づいた被爆者援護法の公平な執行は困難であると考えている」と述べました。

    ■救済を訴えた知事と市長 被告として控訴を決断

     国の判断を踏まえ、大石知事は「上級審の判断を踏まえた被爆者健康手帳の交付すべき統一的な基準が確立すれば、長崎においても手帳交付が拡大することにつながると考える。福岡高裁で再度しっかりと審議してもらい、救済範囲の拡大につなげるために苦渋の決断ではあるが、控訴する」と述べました。

      被爆者と認める被爆者健康手帳の交付は、国からの法定受託事務として、県と長崎市が行っています。

     訴訟では県と市は被告である一方、国に対して被爆地域の拡大や、被爆体験者の救済を求め続けていて、大石知事と鈴木市長は18日に岸田総理とオンラインで会談した際も、原告らと歩調を合わせる形で、控訴の断念やすべての被爆体験者の救済を求めていました。

     鈴木長崎市長は「県と市が国と異なる対応を取って、被爆者健康手帳の交付を行うことは難しいことから苦渋の判断だが、控訴やむなしという判断した」と述べました。

     また、医療費助成の拡充について、鈴木市長は「医療費助成に関する抜本的な拡充がなされたということはこれは被爆体験者全体の救済が大きく前進したということで評価させていただきたい」としています。

     大石知事と鈴木市長は国に対して引き続き救済を求めるとしています。

    ■呆れ、怒り…原告らも控訴 終わらぬ法廷での戦い

     原告の一人、旧古賀村にいて地裁判決で被爆者と認められた松田宗伍さん(91)は「開いた口が塞がらない。なぜ広島は救済されて、長崎はだめなのか、差別ではないのか。皆さんが控訴するなら、死ぬまでついていく」と話しました。  

     県と市の控訴決定を受けて、会見を開いた原告団長の岩永千代子さん(88)は「これは大きな間違い。本当に残念。市民、県民としては許しがたい。勝ち負けの問題ではない(すべての被爆体験者救済へ)明かりを灯していかないといけないという責任感、気持ちがある」「(医療費助成拡充について)いりません。いりません。結構です」「私たちは哀れみを買っているわけではないです。国は誤りですよ。これは」

     また原告の一人、山内武さん(81)も「市も県も控訴を取り下げれば済むことそれで15人は(勝訴が)確定する。寄り添っていると言っておられるので、決断していただきたい」「被爆体験者は被爆者だ」と話しました。

     原告側も控訴する考えを示した上、大石知事と鈴木市長に対面での説明や、控訴を断念するよう求めました。

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