被爆体験者の原告44人のうち15人を被爆者と認めた9日の長崎地裁判決を受け、原告や支援者が長崎市や県に被爆体験者全員の救済などを求めました。
9日に長崎地裁で判決が言い渡された「被爆体験者訴訟」。被爆体験者の原告や支援者は、被告の長崎市や県の担当者に被爆体験者全員の救済を求める要請書を渡しました。
9日の判決で長崎地裁の松永晋介裁判長は、長崎市東部の地区に住んでいた被爆体験者15人を被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付するよう長崎市と県に命じました。地裁判決では「被爆者」として容認する条件として、「合理的・科学的根拠が必要」と指摘。その上で、市や県などが25年ほど前に行った住民の証言調査や当時の風向きから東長崎地区では放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと認めました。
「黒い雨」をめぐっては3年前、広島高裁が「黒い雨」に遭った原告84人全員を被爆者と認めています。一方、原告たちは放射性微粒子を含む灰による健康被害も訴えましたが、「灰が放射性物質だったと認める的確な証拠はない」などとして、訴えは通りませんでした。原告団長の岩永さんを含めた29人は被爆者になれませんでした。
原告団は長崎市と県に対し、被爆者と認められた15人については控訴せず、認められなかった29人を含め全ての被爆体験者の救済を求めました。
原告団長・岩永千代子さん(88):
「微粒子が雨にはあったけども灰にはないと、そんなめちゃくちゃな判決があっていいかなと、私は素朴に思いましたね」
被爆体験者協議会・山内武会長:
「裁判に勝った人だけじゃなくて、12km圏内にいたものは被爆者と、今まで通り国に訴えて、そこをどうにか突破していただきたい」
控訴について長崎市と県の担当者は国と相談した上で、「控訴期限の24日までに判断する」と答えるに留めました。岸田総理は8月9日、被爆体験者との面会の際に「合理的な解決」を厚労大臣に指示していて、今回の判決が影響を与えるとみられます。一方、市や県との解決に向けた協議の日程は決まっていません。
長崎市原爆被爆対策部・阿波村功一部長:
「8月9日に皆さんが総理とお会いした時に総理の方から、政府として早急に合理的に課題を解決出来るよう厚生労働大臣に対し、長崎県、長崎市を含め具体的な対応策を調整するよう指示したというところが、裁判とはちょっと別のところになりますが、そういった動きもありますので、そこをどういうことで進めたいのか、早急にするように市長・議長からもしっかり厚労省の方にお伝えしたいと思います」
長崎市の鈴木市長と大石知事は11日に上京し、厚労省に対し原告団の要望を伝え、今後の対応を協議することにしています。