「被爆体験者」の原告の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決をめぐり、原告らは被告の市に対して、控訴を断念し、国に救済を迫るよう求めました。
長崎地裁は9日、原告の被爆体験者44人のうち東長崎地区の15人を「黒い雨」に遭った被爆者と認め、県と市に被爆者健康手帳の交付を命じました。
判決を受けて鈴木長崎市長と大石知事は11日、上京して厚労省の幹部と面会し、被爆者と認められた原告についての控訴断念や認められなかった原告を含む被爆体験者全員の救済を求める原告側の要望を伝えました。
一方、控訴については、被爆者健康手帳の交付が国から委ねられた「法定受託事務」だとして国の意向を踏まえ判断する構えです。
広島では3年前、「黒い雨」に遭った原告全員を被爆者と認めた高裁判決を受けて、知事や広島市長が上告を断念するよう国に要請。当時の菅総理は上告を断念し、「黒い雨」に遭った人を広く救済する制度が始まりました。
原告らは鈴木市長に対し、「控訴断念」を明言し、広島と同様「政治判断」による救済を迫るよう求めました。
被爆体験者訴訟・原告団長岩永千代子さん(88):
「(広島県知事や広島市長は)自分たちの立ち位置において(上告)しませんと明言された。それで決着した。市長と県知事は必ず私たちを救って下さると信じていいですか?」
市側は、控訴するかどうかは国と協議して判断する考えを改めて強調した上で、被爆者と認定された15人への手帳の交付は、判決が確定しておらず、「今の段階では出来ない」と説明しました。