長崎文化放送制作のテレメンタリー2024「ノー・モア・ナガサキ~戦後79年 長崎を最後の被爆地に~」が、8月24日(土)を放送基準日として、テレビ朝日系列各局で放送されます。ナレーションは、俳優の東出昌大さん(36)です。東出さんに、番組テーマの戦争と平和、核兵器について聞きました。
番組は、ウクライナやガザで戦火がやまず、核兵器が使用される脅威が高まる世界に向けて、「長崎を最後の被爆地に」と訴えます。被爆者の平均年齢が85歳を超えた今、その体験や願いをどう継承するのか。そしてもし今核兵器が使われたらどうなるのか、考えます。
志久弘樹(NCC長崎文化放送プロデューサー/ディレクター):「今戦争とか平和とかについてどういうお考えをお持ちなんですか?」
東出昌大さん:「今?今…まあ『ずっと』なんですけれども、僕はこの平和が続くとはなかなか思えてなくて、僕らの世代、またちょっと上の世代というか、今の日本人というか何かこの平和がずっと続くと大きな勘違いをしちゃってるのかもと、はたと恐怖を覚える瞬間はあって、今までの人類の歴史を鑑みて振り返った時に、こんなに平和が続くってことはなかったというぐらいずっと人類は戦争してきて、それも今歴史が全て終わって振り返ってみるとあの時のファシズムは変だったとか、社会主義は変だったとか現代人は鬼の首取ったように言うけれども、でもイスラエルとパレスチナの問題で、イランが報復できないっていう話だったりとか、もしかしたら台湾有事が今後あったりとか全ての世界的な紛争っていうのは、基本的には間違ってないって思ってる人たちが侵攻をしてたり戦ったりしてて、正義と正義の対立だと思うんですよね。だから今後また戦争が起こるかもしれないって、もし日本人も巻き込まれたら、いやそりゃ防衛すべきだとか、戦うべきだって、また正義かのように思って、盲信して、戦いの火ぶたが切られるかもしれないけれども、そこでもし核が使われたら…とかっていうことを考えた時に、やはり核の被害っていうのが一発で終わらず、何十発って撃ち合ったらって、何百万人っていう人が死ぬだろうし、第三次世界大戦になるのか分からないですけれどもそうやって戦いが連鎖してしまったり、報復に次ぐ報復をしてしまったら本当に取り返しがつかなくなるっていうことは想像に難しくないと思うので…。だから、こういう、まず1年に何回か終戦記念日だったり、原爆が落とされた日に関しての番組を見たりとか戦争っていうものに思いをはせるっていうことは、何か、のんびりした今だからこそ、しないといけないことなのかなって思います」
東出さん:「こういう番組を作り続けて志久さんは長いんですか?」
志久:「長いです」
東出さん:「毎年?」
志久:「毎年…もう10年以上ですかね。長崎原爆は毎年8月9日には何かしらを作るっていう感じでやってますね」
東出さん:「ご親族の方が被爆したということはなかった?」
志久:「私は親族ではいないですけど長崎でニュースとか報道とかやってるとどうしても8月9日っていうのが1年で一番大事な日なので、それを中心に1年が回っているという感じですね。もうこういう私が取材してきた被爆者の方々も多くが亡くなってしまって、あんまりもういなくなってしまったんですけど、そういう人たちの思いを次の時代につないでいくような使命を負ってるのかなと感じながら作ってます」
東出さん:「広島の原爆資料館の中にある蝋人形の表現がちょっとやわらかくなって、それがなくなったりとか、漫画『はだしのゲン』がちょっと危ないというか、グロテスクな描写が多いからって置かれなくなったとか、そういう運動は長崎でもあるんですか?物事をちょっとやわらかにではないですけれども」
志久:「そうですね。長崎原爆資料館の加害展示をどうしようかという話はありますけれども、やっぱり日本の戦争の加害の側面とかをしっかり伝えるのか…。 原爆っていうのもアメリカにとっては『戦争を終わらせた』という考えが根強いですし、それでもこの世界に戦争被爆地というのは二つしかないので、広島と長崎と。だからこそ言えることっていうのは私はあると思っているので、それを世界に発信し続けていくことが、被爆地長崎の使命だと思っているところはあります。みんないつかは核兵器をなくしたいって思いは、世界の方々も持ってはいるんですけど、今はどうしても、核兵器があることで平和が保たれているっていう核抑止論が強いので…。だけど長崎にいれば、それはあっても、核兵器をなくしていけると信じている、本当に信じている方は多いですね」
東出さん:「なくしていけると思うんですけどね…本当に」
志久:「普段は核兵器とかについてはどういうことを考えてらっしゃるんでしょうか」
東出さん:「『なくなりゃいいな』の一心なんですけれども…本当に。学校の図書館に『はだしのゲン』があってそれを読んで衝撃を受けながら育った幼少期で、B29とか原爆がウラン型とかプルトニウム型とか、そういうもんだったんだと色々調べて、何か『死』に対する恐怖心が人一倍強かったのか、色々考えた幼少期だったんです。そして大人になって映画業界入った時に、うわーって思ったのが、大林宣彦監督(1938-2020)が以前塚本晋也監督(64)って、今もご活躍してらっしゃる、戦争映画撮ってる塚本さんに、大林さんご自身は戦前のお生まれで、『私は戦後すぐ活躍したから“戦後”の監督なんだ』と。『塚本くん、あなたは今の時代を生きる“戦前”の監督なんです』って言ってて、『塚本くん、あなたたちの世代、これからの映画人、これからの人間が、ちゃんと生きていかないと、これから戦争に突入するから、あなたたちは戦前の人になってしまうんですよ。とおっしゃって、いや私はその“危機感”というか、そういうもんだなと常々思ってて、“ずっとこれ平和を叫び続けないとだめだろ”ってずっと思うので、僕らの世代だけじゃなく僕らの子や孫の世代もずっと戦争が続かないといいなあと願うばかりではなく、あと“叫ばないとな”と思います」
(志久)「叫ぶ…」
ディレクターは急遽、ナレーション原稿に「叫ぶ」という言葉を書き加えました。
(本編より)「核兵器が使われるリスクが高まる世界へ、叫びます。『長崎を最後の被爆地に』」
長崎文化放送制作のテレメンタリー2024「ノー・モア・ナガサキ~戦後79年 長崎を最後の被爆地に~」は、長崎県内では8月24日土曜日の朝5時20分から。テレビ朝日系列各局の放送日時は、テレメンタリーの公式ホームページに掲載しています。番組は後日テレビ朝日の公式YouTubeなどで配信されますが、東出さんのナレーションでお伝えするのは地上波とCSのみです。