佐世保市上原町のプラモデル専門店「モケイヤ模型」。
店内に入ると…。出迎えるのは、天井の高さまで山積みになった無数のプラモデルの箱。 スーパーカーやオートバイ、戦車に懐かしのおもちゃなど、どこか子ども心がくすぐられる商品ばかり。その数、およそ4000種類に上ります。
「モケイヤ模型」を営む店長の久田輝幸(ひさだ・てるゆき)さん、57歳です。
久田輝幸さん:「箱絵を見ているだけでも楽しいですし、もちろん作っても楽しい。作るだけじゃなくて色を付けていく塗装の作業が楽しい。自分が作った作品が目の届く範囲にあると癒されますよね」
久田さんとプラモデルの出合いは子どもの頃。およそ50年前にさかのぼります。
久田輝幸さん:「子どもの頃は駄菓子屋さんとか文房具屋さんの一角にプラモデルは必ずあって、個人経営のおもちゃ屋さんもありましたし、今より(プラモデルは)かなり身近なところにあった。サンダーバードとかロボダッチとかキャラクターものから作り始めて、車も作りましたし戦車は特に好きで当時はあまり色も塗らずに組み立てるだけ。プラモデルは最高峰の楽しみ方の1つだった」
佐世保市内の高校卒業後は、東京の車販売会社に就職。仕事や子育てに追われ、一時はプラモデル作りから離れますが、50歳の時に、再びプラモデルを作り始める“きっかけ”がありました。
久田輝幸さん:「50歳の時に孫が家に遊びに来た時に、退屈しないようガンダムのプラモデルを10個ほど組み立てて『組み立てたもので遊べば』と渡したのがきっかけ」
ここから久田さんのプラモデル愛が再燃。仕事を続けながらプラモデルを作る日々が始まりました。
久田輝幸さん:「朝4時から出社する朝8時までの4時間。大体毎日(プラモデル作り)。休みの日は起きてから寝るまでずっと作り続けていた」
3年前、54歳の時に一念発起。30年以上務めた会社を辞め、地元・佐世保にUターンし、“第二の人生”としてプラモデル専門店を開業する決断をしました。店内に並ぶ商品の多さは、子どもの頃に見ていた憧れの光景からきています。
久田輝幸さん:「自分が子どもの頃におもちゃ屋さんに行って上を見上げると、高い所に大きい箱の憧れのプラモデルがいっぱい並んでいる。そのイメージになればと思って」
2021年のオープンから3年。早くも県の内外からお客さんが訪れる場所となっています。
客・川棚町から:「Twitter(X)で見て来て」
Q.お店に来たことは?
「きょうが初めて。めちゃくちゃ種類があって迷っちゃうくらい何時間でもいられるような場所だと思います」
店舗の隣には、1時間550円で利用できるレンタルスペースを完備。プラモデルグループ「モケモケサークル」を立ち上げるなど愛好家が集まる新たなコミュニティーの場を提供しています。
佐世保市内から:「息子がプラモデルを作り出して、あまりにも楽しそうにしているから、私もやってみようかなと思って始めたらはまった。家でも作れるけどここに来た方が交流がある」
佐世保市から:「同じ趣味の人とコミュニケーションをとりながらできるのも魅力のひとつ」
サークルのメンバーは、19歳から70歳の総勢35人。年に一度、作品展を開くなど裾野を広げる活動にも力を注いでいます。
久田輝幸さん:「この前、会員が『自分の居場所がある』と言っていました。店を作る上で絶対この場所はつくろうと思っていたので、プラモデルを作る人が増えればと思って塗料は全部使い放題にしている採算度外視で作る人を増やしたかった。プラモデルの楽しさをより多くの人に知ってもらいたい」
サークルの運営や、商品の販売だけではない久田さんのもうひとつの顔があります。それは、プロのプラモデル制作者“プロモデラー”です。
お客さんからの委託制作依頼を受け、プラモデルを1から組み立て。塗装を施し、オーダーメイドのプラモデルを作り上げます。この日、店に訪れた1人の男性。持ち込んだのはガンダムのプラモデル、通称「ガンプラ」です。
委託制作費は1つ5000円から。中には久田さんが1からパーツを作ることもあり、完成までに数カ月かかることもあるそうです。枠からパーツを切り取り、「バリ」と呼ばれる突起にやすりをかけ一つひとつ丁寧に平面にしていきます。切り分けたパーツは、一度完成の形に仮組みし、再び分解。塗装する色ごとに分けていきます。
久田輝幸さん:「あまり厚塗りにならないように、モールドといって溝が彫ってある(厚塗りになれば)消えてしまう吹き出しの空気の量も調整しながらやっています」
塗装の良し悪しが、作品の見栄えに直結します。細かい部分は、細い筆を使って色を付けていきます。塗料を乾燥させると、再び組み立て作業へ。塗装前の仮組みの状態と見比べてみると、作品としての完成度は一目瞭然。色に深みと重厚感のある仕上がりになりました。
「趣味」を「仕事」に。プラモデル作りという第二の人生を歩み始めた久田さん。その情熱は誰にも負けません。
久田輝幸さん:「プラモデルの中だったらスポーツカーでもすごい名車でも自分の手の中に置ける。私の作風で気に入ってもらえれば一番良いのかなと。できれば大事な宝物の一つとして、どこか目に見える片隅に置いてもらえればうれしいです」