自民党の派閥の政治資金パーティー裏金事件で、東京地検特捜部が長崎3区選出で安倍派の谷川弥一衆院議員(82)を政治資金規正法違反の罪で略式起訴しました。
谷川議員は「言い訳は一切しない」「すみません」と話しています。
谷川弥一衆院議員(82)はおととしまでの5年間に政治資金パーティー券の売り上げの中からキックバックを受けた5405万円のうち4355万円を政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の罪で略式起訴されました。罰金が科される見通しです。
また谷川議員と共謀し、安倍派から受け取ったキックバックについて収支報告書にうその記載をした罪で谷川氏の秘書も略式起訴されました。
関係者によりますと、特捜部の任意聴取に対し、谷川議員は不記載を認めていたとみられます。
谷川議員は15日付で一身上の都合とした上で自民党長崎県連の会長を辞任しています。また「特捜部に立件されたら議員辞職する」と話し、すでに辞職願を秘書に預けているということです。また谷川氏は19日付で自民党も離党しました。
略式起訴を受け谷川氏はNCCの取材に「私は長崎3区の恥だ、言い訳は一切しない、すみません」と話しています。
また事務所を通して「本日、略式起訴の手続きがとられる事態に至ったことにつきましては、国民の皆様ならびに長崎県民の皆様に深くお詫び申し上げます。今後の手続きを見ながら後日自らの進退についてご報告させていただきます」とのコメントを発表しました。
五島市出身の谷川議員は県議会議員を4期務めたあと、5期目の1年目の2003年、62歳の時に衆院選長崎3区に出馬し、初当選しました。
谷川弥一衆院議員(当時62・2003年):
「当選の喜びはもちろんですが、やらなきゃならない課題が大きいんで、そんなニコニコニコニコするわけにもいきません。大きな課題があります。頑張りますから」
現在、衆院議員7期目。これまで文部科学副大臣や農林水産大臣政務官を歴任してきました。
谷川弥一衆院議員(当時81・2021年):
「(7期目は)今まで通りやっていくよ。情熱を持って」
特に力を入れて取り組んできたのは、自身の古里・五島などの離島振興です。2016年、国境に近い全国71の離島を無人島にしないように財政措置を行う特別措置法、「国境離島新法」の成立に尽力してきました。(2017年施行)
谷川弥一衆院議員(当時75・2016年):
「どうしてもソフトを中心とする法律をつくらないと、いずれ無人島になるぞという危機感のもとに、今回有人国境離島振興というものが出来た」
県議と国会議員合わせて議員人生およそ40年間、一度も議員バッジを外したことはありません。(県議1987年~2003年・国会議員2003年~現在)
一方、様々な言動で世間から注目を集めることもありました。
2009年には、北九州市内で開いた国会議員数人との会合に長崎検番の芸妓衆を呼び、交通費や宿泊代を含めた代金15万5736円を組織活動費として、収支報告書に計上していました。谷川議員は全額返金し、収支報告書を訂正。「長崎の芸術を見せようと思った」と話していました。
2016年には、国会で質問時間を持て余し、「般若心経」を唱えて物議を醸しました。
谷川弥一議員(当時75・2016年):
「私は禅宗なので善の勉強を40歳の記念に3年やったんですが『般若心経』というのがあるんです。観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄・・・」
2019年には、九州新幹線長崎ルートの整備をめぐり、全線フル規格に反対する佐賀県の山口知事に対し「韓国か北朝鮮を相手にしているようだ」と発言。谷川議員は、「新幹線問題の解決のためには佐賀の説得が不可欠。大変困っているという意味で言った」として、後日、発言を撤回しました。
そして去年、自民党の派閥の政治資金パーティー裏金問題で、自身に4000万円を超えるキックバック疑惑が浮上すると…。
谷川弥一衆院議員(82):
「事実関係を慎重に調査確認して、適切に対応してまいりたい」
(Q.キックバックがあった?)
「今コメントしただけです。僕が今言えることは」
(Q.これからの議員活動については?)
「だから今言った通りと言ってるじゃない。なんで同じことを何回も言うの?」
(Q.会派の中でそういったことがあった?)
「まあいいから。その通りって。何を言ってもその通りと。頭悪いね。言ってるじゃないの。質問してもこれ以上はきょう言いませんと言ってるじゃない。分からない?きょうはこの時点でこの通りだって。
ここに来てるんだから。それは評価してほしいな。逃げまくっているわけでは何でもない。良いことした時は全然取材に来ないけどね。すごいねマスコミっていうのは。(自分は)やってきたんだよな。色々と。誰も取材に来ない。
まあしかし色々言っちゃいかんな、俺が悪いんだ今は」
谷川議員が略式起訴されたことを受けて選挙区の市民は…。
大村市民:
「嫌ですよね。大村、長崎県の(政治家)で。知らないで票を入れていたから」
大村市民:
「恥だね。国民を失望させる政治家はもってのほかの問題。論外」
大村市民:
「自分の懐を潤してくれるところに忖度した動きをしてしまうと疑われかねないような政治家はあってはならない。そういったものは根絶してほしい」
また12年間、谷川議員を支援してきた島信行後援会長は複雑な心境を語りました。
谷川弥一後援会・島信行会長:
「悔しい、本当に。長い議員生活の中で最後の幕引きがこうなったというのはご本人が悔しいと思うし、我々も後援者の一人として、支援者の一人として残念だという思いは率直に感じている」
島後援会長は今回の一件は「晴天の霹靂だった」とし、谷川議員への「イメージが変わった」と話します。去年12月初めには、谷川議員の在職20周年の祝賀会を主催したばかりですが、谷川議員からの説明はいまだにありません。
島信行後援会長:
「私を含め後援会のみんなに対して顛末というか、なぜこうなったのかについての説明はしてほしいと思っている。
『谷川弥一をよろしくお願いします』と、多くの有権者後援会の皆さんにお願いしてきた。こういう結末になって、今までお願いしてきた皆さんに対しても、道義的に申し訳ありませんでしたとおわびを申し上げたい」
自民党県連の前田哲也幹事長は「県民の皆様にご迷惑と政治不信を招き、自民党への信頼を大きく損ねたことに対し、お詫び申し上げます。信頼される政治活動を心がけ、県民の付託に応えるべく取り組んでまいります」とのコメントを出しました。
このほか自民党の県議からは、「最後にこのようなことがあると、これまでの功績が水の泡。辞職は個人の問題だが、旧長崎3区の補欠選挙に手を挙げる人がいるのか、後継者を心配している」という声も上がっています。