【長崎】直木賞作家・垣根涼介さんが受賞後初凱旋 受賞連絡の裏話や『極楽征夷大将軍』主人公への思い語る
第169回直木賞を受賞した諫早市出身の垣根涼介さん(57)が受賞後初めて長崎に凱旋しました。先ほどNCCの単独インタビューに応じ、歴史小説の魅力などを語った垣根さん。長崎市内でのサイン会にも多くのファンが集まりました。
午後、大石知事を表敬しに県庁を訪れた垣根涼介さん57歳。室町幕府の初代将軍・足利尊氏の半生を描いた受賞作『極楽征夷大将軍』は、やる気も、使命感もない尊氏が、混迷の時代でなぜ天下を取れたのか?独自の解釈を加えながら、数奇な運命に迫る歴史群像劇です。
垣根涼介さん:
「一見偉人とか偉かった人と言われている人でも、よくよく調べてみるとこいつはろくでもないなという人間が好き。ぐずぐずのどうしようもないみたいな人間が好き。たまたまそういう人間のパターンとして資料を読んでいるうちに尊氏を見つけて描こうと思ったのがきっかけ」
大石知事:
「長崎はいろいろ歴史がある街なので、ぜひ今後の活動の一端にこの長崎をぜひ、よろしくお願いします…と言っていいんでしょうか…」
垣根さん:
「要は長崎を舞台にした小説を書くようなことがあれば、僕も頑張って書きたいと思います」
垣根さんの作品は過去に2度、直木賞の候補に挙がり、今回が3度目の正直でした。
垣根涼介さん:
「(受賞後)何か劇的に変わったと言えればうれしいが、特に変わりなく淡々と毎日小説を書いている」
知事との面会後、NCCの単独インタビューに応じた垣根さん。
垣根さん:
「失敗することは慣れている。基本失敗して当然と思っている、仕事は。そこの中でも100回に1度だけでも成功できればめっけもんだと思っていつも仕事している」
直木賞受賞の一報を受けたのは、意外な場所だったといいます。
垣根さん:
「(バーの)トイレに入っていたら『携帯が鳴ってた』って編集者が持ってきて、『受賞しました』って。なんか全然さえないですよねハハ」
垣根さんは県立諫早高校、筑波大学を卒業。旅行代理店に務めながら書き上げた「午前三時のルースター」(2000年)でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞し、鮮烈なデビューを飾りました。その後も、ミステリーや冒険活劇で数々の文学賞を受け、10年前から歴史小説に軸足を移しました。
垣根さん:
「映像に対する小説の優位性は何かと考えた時に、人の内面をきっちり掘り込めるかどうか。そこは小説のアドバンテージのあるところで勝負したかった」
今回、主人公として描いた足利尊氏にも、引き込まれる人間性があったといいます。
垣根さん:
「基本的にやる気はないし、だらしはないし、ビジョンもないし、根気もないという人物、よくもまあこれで室町幕府の初代征夷大将軍になれたなっていうところから始まっている。調べていけばいくほど人間のだらしなさが浮き彫りになってきて、逆に言うとそこに興味を持った。ところが、学生時代の友達が僕の『極楽征夷大将軍』を読んで『こういうところお前にそっくりだぞ』と言われて。え、俺そんなだめなの?ってつい言っちゃった。自分のだめさ加減がここにも出ているから書きたかったのかなと」
尊氏の生き方に、読者に伝えたいメッセージを込めました。
垣根さん:
「ある意味でかっこよくはないけれども、尊氏の生き方には何か感じるものが皆さんにもあると思う。そういうところを読んでほしいかなと思って書いた部分もある」
金山隆之介記者:
「こちらではこのあと垣根さんのサイン会が行われるということで垣根さんのファンや知人が集まっています」
女性ファン:
「おめでとうございますとお伝えしたい」
アミュプラザ長崎3階のメトロ書店長崎本店の特設会場では午後6時前からサイン会が開かれ、垣根さんが地元のファンと会話を交わしながら、受賞作「極楽征夷大将軍」を購入した先着100人限定で一冊一冊、裏表紙にサインをしていました。