
長崎県諫早市白原町。のどかな田園の一角に、ひときわ賑やかな「にわとりの楽園」があります。園主は鍬崎進さん64歳。38年間のサラリーマン生活を終え、定年退職後に“第二の人生”として選んだのは、100羽を超えるニワトリと共に過ごす日々でした。
3月のある日、「にわとりの楽園」は新たに30羽の雛を迎えました。鍬崎さんは、うれしそうです。
「雛って今しかないですからね。もっとかわいくなりますよ」
5年前、畑の一部にクラウドファンディングで鶏舎を建て、ボリスブラウンという種類のメス鶏を約130羽、平飼いで育てています。退職して自由な時間が増えると、週末に取り組んでいた米づくりだけでは物足りず、「もっと好きなことを」と考えた末にたどり着いたのが、ニワトリとの暮らし。 「文字通り、楽園みたいなのを作ってみようかな。できるかなと思い立った」 毎朝6時、発酵飼料作りから一日が始まります。米や米ぬか、おから、小麦、大麦、昆布、エビ、イリコ、かつお節…具だくさんの発酵飼料は、香りもよく、ニワトリたちに大好評です。手間はかかりますが、まったく苦にならないそうです。 「かわいがった分だけ懐いてくれる。相棒みたいなもんですね」 名前を呼ぶと駆け寄ってくるニワトリもいて、まるで家族のような存在です。 こだわりのエサが生み出す卵は、毎日60個ほど。「白身がうまい」「黄身が食べられるようになった」など、お客さんからも評判です。黄身はトウモロコシやヒマワリのような鮮やかな黄色で、白身もぷりっと弾力があり、卵かけご飯にすれば醤油すら要らないほど濃厚な味わい。「楽園たまご」として直売所や道の駅でも販売されています。 国産小麦、低温殺菌の牛乳など素材にこだわっている西彼・時津町の「山の上のパン屋さん うりぼう」の鈴木愛子さんも「楽園たまご」のファンのひとりです。のびのびと育つ鍬崎さんのにわとりを見て惚れ込み、パン作りにも使っています。 「エサにこだわってらっしゃるから、卵の黄身の色も薄い黄色で、メロンパンにしてもきれいな色のメロンパンが出来上がります」 多くの人をとりこにしている卵ですが、卵はあくまで“楽園”のアウトプット。ニワトリたちと過ごす時間そのものが、鍬崎さんにとってのご褒美であり、幸せです。 「卵を売るためじゃなく、ニワトリがかわいくて飼っている。ペットの延長なんですよ」 そんな楽園には、3人の孫もよく遊びに来ます。小さな手で産みたて卵をそっとつかみ、ニワトリを抱っこし、じぃじの卵で作った卵焼きを頬張る――家族の絆も、にわとりを通じて深まっています。 「なかなか、こういう体験はできない。ニワトリきっかけで、つながりもできて、良い時間ですよ」 ニワトリたちの声と、孫たちの笑い声が響く「にわとりの楽園」。それは、退職後に自分の手で築いた“人生の楽園”そのものです。いくつになっても、新しい夢を追いかけることはできる。自分の楽園は、自分でつくれる。鍬崎さんの姿は、そんな希望と温かさに満ちています。 楽園たまごの取扱店
大人気の“楽園たまご”
「じいじの卵、おいしい」
・にわとりの楽園(諫早市白原町1648番地)
・ファーマーズマーケットきん彩(諫早市鷲崎町337−1)
・道の駅 長崎街道 鈴田峠(大村市中里町452−22)
・産直かやぜ(大村市荒瀬町1037−1)