
正月休みで2キロ増量し、体重112キロの中嶋航大記者(32)。前回、シリーズ初の“離島”取材で五島列島北部・小値賀町に上陸。島の空気と人の温かさに包まれながら、今回も「満腹記者がゆく!」がスタートしました。
「NCCは5チャンネルかな?」
話しかけてきたのは、ヘルメットをかぶった男性。話を聞くと新聞配達の仕事中だそうです。でも、時刻は午後3時半。とっくにお昼を過ぎています。
「午前10時40分のフェリーで持ってくる。午後2時くらいに配達。だから朝刊じゃなくて夕刊なんよ」
しまの暮らしが垣間見える男性との会話。「おすすめグルメを探す」という取材の目的を伝えると、きょうオープンのうどん屋があるという、新店情報が飛び出します。しかし...
「えーっとね…五島うどん。じげもん…じげもんじゃない。ちょっと待ってね」
店名が思い出せません。するとここからまさかの展開に...。その様子を見ていた近所の人が「うどん屋さんの名前?」「きょうオープンしたとこ?」と、どんどん輪が広がり始めます。
「よっていかんせ…じゃなかった」
「ちょっと電話で聞いてみる!」
島の皆さんが一緒に知恵を出し合い、情報網が一気に広がっていきます。まるでひとつのチームのように、初対面の記者のためにみんなで協力。3分後に店名が判明しました。
「とどしかね」
「とどしかね」は小値賀弁で「久しぶり」という意味。島の人たちの温かさと一体感に心がほっこりしたところで、今回は、取材当日にオープンした「とどしかね」にロックオン。
「これで俺も新聞配達に戻れる」
高速船やフェリーが発着する小値賀港のすぐ近くに2025年12月22日にオープンした「とどしかね」。明るく出迎えてくれたのは、店長の岩坪敦子さん(67)です。
「まさか、取材がすぐ来るとは思ってなかった」
オーナーの川元藤春さんは、福岡からUターンし、地元で建設業を営む傍ら、島のためにうどん店を開きました。
「地元のうどんを使って五島うどんを出している。全部地元産の食材を使っている」
「とどしかね」は、五島うどんの専門店。看板メニューのひとつ「ごぼう天うどん」(740円)を注文しました。
「麺がたっぷりじゃないですか?」
「そうですね、女性には多いと言われます」
上五島の製麺所から仕入れる麺を使った五島うどん。目を引くのが、ごぼう天です。小値賀産の厚みのあるごぼうを5~6センチの長さで食べ応えのありそうな四つ割りに。まずは少し濃い色のだしからいただきます。
「うん、おいしい!もしかしてあごだしですか?」
だしの主役は、小値賀で作られる焼あご。昆布やかつお節の旨みを重ね、濃口しょうゆでキリッと仕上げたスープは、香ばしさと深いコクが広がります。味のバランスは、納得いくまで何度も試行錯誤を重ねたそうです。
「小値賀には、焼あごを作るおばあちゃんたちがいる。その人たちから作り方を習ってその技法をうどんに。先人がいるから」
ごぼう天のごぼうは、地元の同級生が育てたもの。衣がだしを吸って、口いっぱいにおいしさが広がります。子どもから大人まで、だしまで飲み干して帰る人が多いのも納得です。
「麺がふわふわですね。五島うどんって、ツルンとしたのどごしのイメージだったんですけど、麺がふわっとしている。何より濃厚なあごだしと絡んでおいしい」
「味は二の次。お客さんが“おもしろかった”“また来たい”と思える店にしたい」と語るオーナーの川元さん。味はもちろん、店内の笑い声や人とのふれあいこそが「とどしかね」を作った目的です。
「味もちゃんとおいしかったです。また帰ってきたくなる場所ですね」
「いつでもどうぞ」
焼あごの香りが広がるだしに、島の食材を重ねた五島うどん。おいしさはもちろん、笑い声まで“味”になるような「とどしかね」。「久しぶり」と帰ってきたくなる場所がまた1つ増え、今週も、満腹、満腹。
店長の岩坪さんに電話で聞いてみました。「その後、うどんがパワーアップして、ごぼう天も大きく、麺も多くなっている」ということです。お客さんの笑顔も増えているのではないでしょうか。
とどしかね
住所 小値賀町笛吹郷
電話 0959-42-5717
営業 11:00~14:30(L.O)
休み 火曜