渋い色合いと光沢のある茶碗やカップ。これらの作品を作っているのは、大村市に工房を構える「銀職庵水主」の職人、中山智介さんです。
見た目からは、重厚感さえ感じさせる器の数々ですが、手に取ると意外な「軽さ」。この器、実は「皮革工芸品」なんです。
中山さんは、革職人です。世界中から取り寄せた革を研究し、独自で開発した技法や素材を用いて使って、幅広いジャンルの革製品を製作しています。
器類は、造形だけの飾り物ではありません。熱湯入れてもOK。食器用洗剤で洗え、革のにおいも消しています。昆虫から抽出した樹脂を浸透させることで、食器としての使用に耐えるよう硬く加工しています。
歯科技工士の学校で金属加工などの技術を身に着けた中山さんは、その技術を応用して貴金属加工の世界に飛び込みました。顧客からシルバージュエリーを用いた革財布のカスタム加工などを請け負う中で、自身で革製品の加工を手がけるようになったそうです。
輪っか状にカットした革を積み重ねて筒状に形づくった「播州白鞣(ばんしゅう・しろなめし)牛革 半筒茶碗」。伝統的な焼き物のような風合いをもつこの作品は、2021年、国内最大の革製品の大会「ジャパンレザーアワード」で、フューチャーデザイン賞を受賞しました。
初めて出品したのは、2018年。「カワノケンダマ」は、フリー部門のベストデザイン賞を受賞しました。
中山さん:
冒険みたいなところがあったんですよね。業界がこれを受け入れてくれるのかという不安も。ところが「こういうモノを待っていた」と言われてすごくうれしかったですね。
その後も球体状の将棋盤「天球将棋」、丸洗い可能な弁当箱「革ノ花見重」など、遊び心とアイデアにあふれる中山さんの作品は、革製品業界で高い評価を得ると共に新しい風を吹かせています。
中山さんのアイデアの源泉は、いろんなものに触れる体験と、本などからの知識の吸収。でもアイデアが生まれるのは・・・
中山さん:
アイデアの生まれる現場は、いつも釣りに行っている時なんですよ。無意識になった瞬間に日頃溜めこんだアイデアのピースみたいなものが、組み合わさって
希少な革を使ったオーダーメイドのレザークラフトをメインに、貴金属細工なども手掛ける中山さん。自分しかできないものづくり、革の可能性を追求しています。
銀職庵 水主(かこ)
住所 大村市水主町1丁目978-92
電話 090-1975-7478