子どもたちの元気な泣き声で福を呼び込みます。長崎市の手熊・柿泊地区伝統の節分行事、国の選択無形民俗文化財の「モットモ」が行われました。
長崎市の手熊・柿泊地区に伝わる「モットモ」。10年前の2015年、国の無形民俗文化財に指定された節分行事です。節分前日1日の夕方、手熊町の公民館には、黒や赤、白のドーランを顔に塗る男たちの姿がありました。
今年で2回目のモットモ爺を務める中山晋太郎さん45歳。手熊小学校の先生です。
モットモ爺・中山晋太郎さん(45):
「みんなが味わってきた恐怖を僕も届けることが出来たらいいなと思ってます」
「モットモ」は年男と福娘、モットモ爺の3人一組で家々を訪ねます。福娘を務めるのは、中山さんの教え子で手熊町の中学1年生、亀山海人さん(12)です。
福娘・亀山海人さん(12):
(モットモ爺家に来た?)
「来ました」
(どうだった?)
「ギャン泣きでした」
今年は5つの班に分かれ、町内の約100軒を回りました。年男が「鬼は外」と唱えながら豆をまき、女装した福娘が「福は内」と唱えながら続きます。最後にやってくるのがモットモ爺です。「モットモ」と大声で叫ぶのは、「鬼は外」「福は内」が「ごもっとも」という意味に由来すると言われています。しかし、子どもたちにとってはただただ「恐怖」でしかありません。子どもが泣けば泣くほど、福が舞い込むと言われています。
こちらの家には、親戚中の子どもたちが集まっていました。楽しい時間が一変、恐怖の時間が訪れます。慌ててお母さんの後ろに隠れる子どもたち。
子ども:
「おりこうにします…」
正月やお盆と同じようにモットモに合わせて親戚や友人たちが集まります。地域のつながりを深める伝統行事ですが、主役となる子どもの数は年々減っているそうです。
来年度で創立150周年を迎える手熊小学校は、来年3月での閉校が決まっています。
手熊町・川勝貞敏自治会長:
「先々自分が青年になった時に、こちらに住んでいれば同じようなモットモ爺の配役を受けたりして、自分の子ども、孫にも経験してもらいたいと考えてもらえれば一番いいかなと思っています」
堀将太さん:
「すごくいい行事だと思います。だからもっとやってほしかったくらい。」
堀舞子さん:
「怖いこともあるけど、それを乗り越えてたくましく育ってほしいなと思います」
地域の人たちが大事に守り続けてきた伝統行事「モットモ」。子どもたちにとっては怖い経験も、大切な思い出として次の世代に受け継がれていくことでしょう。
福娘・亀山海人さん(12):
(モットモ爺をやりたい気持ちある?)
「あります!絶対したいです!」
モットモ爺・中山晋太郎さん(45):
「僕は手熊の者ではないけど、これに関わって頑張ろうとする子どもたちや若者が少なくとも去年よりは増えたなというのは僕もその一助になれたのかなと感じました。去年、今年と関わらせてもらって、幸せだなと思ってます」