国が定めた援護区域の外で原爆に遭った被爆体験者の救済をめぐり、県と長崎市が、新たな医療費助成事業の申請の受け付けを来月1日に始めることを受けて、5日、被爆体験者らが再要請書を鈴木長崎市長に提出しました。
国はこれまで、医療費が原則無料になる被爆者とは異なり、国が定めた援護区域の外で原爆に遭った「被爆体験者」への医療費の助成は、被爆体験による精神疾患とその合併症などに限定してきました。
岸田前総理は9月、「被爆体験者」の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決を受けて、全ての被爆体験者に被爆者と同等の医療費を助成すると発表。その後、厚労省と県、長崎市の三者で詳細を詰め、12月1日から申請を受け付けることを決めました。
新たな事業では、条件を緩和し、がんや糖尿病、白内障といった11の疾病があれば、精神的な疾患がなくても医療費助成の対象になります。また、原爆投下時に胎児だった体験者も新たに対象に含めます。
これを受け、被爆体験者や支援団体は「事前の協議や説明もなく新たな医療費助成事業を開始するのは当事者をないがしろにした暴挙だ」と強く抗議し、鈴木長崎市長に直接、被爆体験者問題についての再要請書を手渡しました。
鈴木長崎市長:
「今回の医療制度の話につきましては、我々も(国から)通知を受けた立場ですのである意味皆さまと同じような立場でございます。いずれの問題についても国の話になって参りますので、国にしっかり皆さまのご要請をお伝えさせていただきます」
長崎市によりますと今月1日に厚生労働省から新たな医療費助成事業の実施についての通知が届き、県と長崎市は対象者向けのリーフレットなどを製作。今月中旬以降、事業の内容を通知する準備をしていたということです。
第二次全国被爆体験者協議会・岩永千代子会長:
「医療費助成が助かる人もいますよ。困っている人がいるから。それよりもまず被爆者であるかないかということ。もうお金の問題じゃない」
新たな医療費助成事業の対象となる被爆体験者は県内外の約6300人にのぼる見込みで、県と長崎市は11月中旬をめどに県内で4回、医療機関向けの説明会を行う予定です。