実写を超えたリアリティーを刻む異色の画家の作品が並びます。超絶技巧の鉛筆画の展覧会が県美術館で開かれています。
鉛筆による細密描写で現代アート界に衝撃を与え、2013年に63歳で急逝した画家、吉村芳生さん。鉛筆で克明に描き写す制作スタイルとその描写力で、見る人に驚きや感動を与える作品を数多く残しました。初期から晩年までの約500点を展示した「超絶技巧の鉛筆画 吉村芳生展」、その魅力に迫ります。
故・吉村芳生さんの妻・春美さん(62):
「息子にはいい父親でした。それがなければ息子は同じ絵描きの道を選ばなかったと思います」
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「自分にとっては(父は)目標です」
そう語るのは芳生さんの息子、大星さん(32)です。大星さんは、中学を卒業後、進学をしませんでした。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「僕もいつか父のように画家になれたらいいなと思ってアシスタントを始めました」
そして現在は作家として活躍しています。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「僕はね、この作品を主に描いています。父と同じ色鉛筆で描いてます」
技法も全て父・芳生さんと同じです。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「15歳の頃に鉛筆画を描きました。その時からこの作品を猫をテーマに、父とは違うテーマを描きたいなと思って」
芳生さんの作品の中で大星さんの一番のお気に入りはこちらの作品。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「この藤の作品は描いている途中に3.11が起こって父もそれに対してショックを受けていたが、フジの花ひとつひとつを震災で亡くなられた方の命と重ねて表現したと本人は言っていたので、よりフジの作品がただリアルに描いているというだけではなく、より作品としてメッセージ性が強くなったんだなと思います」
アシスタントとして父・芳生さんを支えながらも父の背中を追い続けてきました。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「大作を描いている時も必ずこの絵を描き上げるんだという熱量は背中を見ていて伝わってきました」
芳生さんの遺作となるのがこちらの作品。
東京ステーションギャラリー・富田章館長(62):
「プリンターと同じようなものですよね。端こっからカタカタと印刷をしていって途中でカタっとその印刷機が止まっちゃったら残りは真っ白く残りますね。それと同じような状態で彼の遺作が残っているんですね。それは吉村さんの制作方法を非常によく物語っています」
芳生さんはこの作品の制作中に病に倒れ、帰らぬ人となりました。
故・吉村芳生さんの息子・大星さん(32):
「14メートル、過去最大のスケールの花の作品にしたいと言っていました。『そんなの描けるの?』って思っていましけど、今思っても14メートルっていう大作はイメージできない。もし今も父が生きていたら必ず完成させていたでしょうね」
企画展「超絶技巧の鉛筆画 吉村芳生展」は県美術館で5月12日までです。入場料は一般1200円。小中高生は600円。小学生以下は無料です。