東京・港区にあるロシア大使館。
ロシアのノズドリェフ駐日大使が、NCCの単独インタビューに応じた。
テーマは、ウクライナ戦争、核兵器、そして「核なき世界」だ。
日本で浮上した核保有論についても見解を示した。
■ロシアの核抑止政策「防衛主導型」
ロシアの核抑止政策について、大使はこう説明する。
「ロシアの核抑止政策は、あくまで防衛主導型です。国の領土保全、そして主権を守るという大きな目的を持っています」
核兵器を使う可能性についても、
「国家の存続を脅かす大規模な侵略や攻撃への最終手段」
という位置づけだと強調した。
その原則に立ち、
と述べた。
■「核兵器のない世界」は可能か
ロシアの外交政策についても、大使はこう語る。
「核を含めた大量破壊兵器から世界を守ることは、ロシア外交の優先分野の一つです」
NPT(核不拡散条約)については、
「ロシアとしてきちんと守っています」
とした上で、
「首脳レベルを含め、核軍縮に向けた新しい行動や措置については、議論する余地が十分あることを確認してきました」
と話した。
そして、個人的な考えとして、こう明言した。
「実は私は個人的に、
核兵器のない世界への道のりは、ないとは思いません」
そのために必要なのは、
「幅広い、全ての国が参加できる安全保障体制」
「不可分の安全保障原則」
だと指摘する。
■ 原爆投下「軍事的必要性は全くなかった」
広島・長崎への原爆投下についても、大使は自身の認識を述べた。
「当時アメリカが一般市民に対して核兵器を使うという決定をしたことは、
どうしても許されないことだと、私は個人的に思います」
その上で、
と語った。
■日本の「核保有論」への受け止め
官邸筋から「日本も核兵器を持つべきだ」という発言が出たことについて、
大使は二つの点を指摘した。
まず、
「公にそういった考え方に言及したこと自体が、日本の一般市民にとっては失礼な考え方だったと思います」
そして、
「日本政府は、自国民、そして国際社会に対して、一貫した立場をきちんと説明すべきです」
と述べた。
中国や北朝鮮から強い反発が出ていることについても、
「安全保障政策を担当する人は、
ああいったことを公に言うべきではない」
「日本では核問題への感情は非常に敏感です。
もっと国民の感情を重視すべきだと思います」
と語った。
■「核を持てば、安全になるとは限らない」
日本が核兵器を持つ可能性について、大使はこう指摘する。
「日本が核兵器を持てば、ロシアだけでなく、地域全体の安全保障にとって、大きなダメージになります」
新たな核保有国が生まれれば、
「核保有国は、自国の軍事戦略の中で
それを考慮せざるを得なくなる」
「核保有国になっても、必ずしも安全保障は強固になるとは限りません。
逆効果の可能性は、はるかに高い」
と述べた。
■「努力し続けることが、市民への責任」
最後に、「核兵器のない世界に近づけるのか」との問いに、
大使はこう答えた。
いろいろ努力すべきだと思います」
「それは近いうちに可能かどうかは別として、
努力し続けるべきです。
それは、私たちの一般市民に対する責任でもあります」
※本インタビューでは、核兵器のない世界に至るための具体的な条件や日本の核保有の是非などについても、さらに踏み込んだやり取りが交わされた。
こうした議論は、2026年公開予定のNCC長崎文化放送 報道ドキュメンタリー
『VOICE―この星で、どう生きる』(仮)で伝える。