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2025/11/16(日) 22:48

【災害級クマ被害で政府対応】専門人材の育成急務“技術の承継”人里と自然の境界は

  • #社会

全国各地でクマによる被害が急増している。警察官によるライフル銃使用が開始され、自衛隊も出動するなど、政府は異例の態勢で事態の対応に乗り出した。環境省によると、今年のクマの出没件数は全国で2万792件、9月末時点で被害者108人、11月5日時点で、13人が死亡した。被害は北日本を中心に西日本にも及び、近畿2府4県では1373件に達した。日本には北海道のヒグマと本州のツキノワグマの2種が生息するが、いずれも近年、山林の食糧不足などを背景に生活圏へ進出が確認されている。新潟県新発田市では、警戒中の猟友会員がクマに襲われ、顔などに重傷を負った。男性は負傷しながらも自ら駆除を行ったという。秋田県が運用するクマ情報マップ「クマダス」には、14日だけで53件の目撃情報が寄せられた。秋田駅からも近い千秋公園では、10月25日、クマの出没が相次ぎ、立ち入り規制と解除が繰り返された。11月13日になってようやく規制が解除された。

防衛省は5日、秋田県の要請を受けて、陸上自衛隊を派遣。捕獲の支援にあたっている。12日の参院予算委員会で高市総理は「近く対策パッケージをまとめ、補正予算を活用して順次実行する。猟友会への委託費や捕獲費用の支援を拡充する」と述べ、2025年度補正予算案に関連経費を盛り込む考えを示した。13日には、警察官によるライフル銃の使用を正式に認める運用が開始された。これにあわせて秋田県などの警察で「クマ駆除対応プロジェクトチーム」が発足。狙撃手2人、現場指揮官、管轄警察責任者の4人体制で、緊急時に出動する仕組みを整備した。14日に取りまとめられた政府の「クマ被害対策パッケージ」は、緊急・短期・中長期の3段階で構成される。緊急対応では、自衛隊・警察OBに狩猟免許の取得を促し、即戦力として協力を要請。短期施策では、いわゆる「ガバメントハンター(自治体による専門駆除班)」の人件費や資機材支援、冬眠期や冬眠明けを狙った個体数削減の実施。中長期施策としては、生活圏からの排除に向けたガイドライン改定や、個体数管理の見直しが盛り込まれた。一方で、市街地での駆除活動には課題も多い。住宅が密集する市街地での銃使用については、「跳弾による二次被害」など、住民の安全面への懸念が根強い。また、警察官によるライフル銃の操作や運用の可否をめぐっても、不安の声が少なくない。

冬眠に入るはずのクマにも注意が必要だ。福島県喜多方市では昨年12月、民家のこたつに侵入したクマが頭を突っ込む事例が確認された。2020年1月、山形県米沢市では住宅の軒下で衰弱したクマが発見されるなど、かつて想定されなかった事態が各地で起きている。クマ出没の情報に精通する森林総合研究所の大西尚樹氏は、「今冬は冬眠できない子グマが出てくる可能性がある」と指摘する。母グマだけが駆除されて、冬眠の仕方もわからない子グマが出てくるというのだ。

クマの分布域は1990年代以降、急速に回復してきた。大西氏は「狩猟の自粛や駆除の禁止・制限など、保護政策が長く続いたことに加え、ハンターの減少により、個体数が増加し、駆除が追い付かない状況がある」と説明する。被害が広がる要因の一つとして注目されているのが「ドングリ」の不作。冬眠前のクマにとって、ドングリは重要な栄養源である。豊作の年は山中で十分に食料を確保できるため、人里への出没は減る。しかし、凶作の年にはエサを求めて行動範囲を広げ、住宅地や農地への出没が増加する。北海道猟友会札幌支部に所属する現役ハンターの玉木康雄氏は、「各地で進むクマ対策の中には、電気柵など技術的手段もあるが、今年は柵を潜り抜けるクマが増えるなど、根本的な解決には至っていない」と対策の困難さを指摘する。

全国で深刻化するクマの出没と被害。大西氏と玉木氏によると、被害抑止に向けて「個体数の調整」「ガバメントハンター(自治体による専門駆除班)の常設」「ハンター技術の承継」を挙げた。大西氏は、単発的な駆除に頼る従来の対策では限界があると指摘したうえで、「人の生活圏に現れた個体をその都度排除するだけではなく、広域的に生息密度を下げ、個体群動態や遺伝的多様性を長期的にモニタリングし、科学的根拠に基づいた管理基準を構築することが重要だ」と強調する。現場の実働を担う「ガバメントハンター」の常設化も課題の一つ。大西氏は「同時に、地域の環境管理を担う人材の育成が求められる」と専門人材の育成を訴える。玉木氏も「捕獲技術を持つ人が減っており、次世代への承継には金銭的な支援が必要だ。現場の判断を尊重し、状況に応じて柔軟に対応できる法規制が必要」と語る。一方で、ハンターの待遇は厳しい。

★ゲスト: 大西尚樹(森林総合研究所)、玉木康雄(北海道猟友会札幌支部) ★アンカー: 末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)

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