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2025/8/15(金) 11:23

戦後80年 「ズッコケ三人組」著者・那須正幹さんの遺稿が絵本に

  • #社会

 「ズッコケ三人組」で知られる作家の那須正幹さん。戦後80年の今年、遺作となる絵本が刊行されました。那須さんはどんなメッセージを遺したのでしょうか。

 8月6日。広島は80回目の原爆の日を迎えました。

こども代表 「被爆から80年が経つ今、本当は辛くて思い出したくない記憶を伝えてくださる被爆者の方々から直接話を聞く機会は少なくなっています。どんなに時が流れてもあの悲劇を風化させず、記録として被爆者の声を次の世代へ語り継いでいく使命が私たちにはあります」

 その広島を描いた絵本「やくそく ぼくらはぜったい戦争しない」。作者は「ズッコケ三人組」シリーズなどを手掛け、2021年に亡くなった作家・那須正幹さんです。

 今年、ポプラ社から刊行されたこの絵本は那須さんが亡くなった後に公表された「遺稿」とも言える原稿から作られました。自身も3歳の時に広島で被爆し、多くの作品や講演などで戦争の悲惨さや平和の大切さを訴えてきた那須さん。

 遺作となったこの絵本には、どんなメッセージが込められているのでしょうか。

絵本作家 武田美穂さん 「より小さな方に命の大切さとか戦争をしちゃいけない、なぜならば命が大切なんだという根源的なところをすごく易しくかみ砕いて作った本だと思います」

 絵本の作画を担当した絵本作家の武田美穂さんです。お話の舞台は現代の広島。原爆で肉親を亡くし、ひとりぼっちで大きくなった「ばあちゃん」との交流を、中学生の孫・ヒロシくんの目線で描いています。

武田さん 「人の心や人を大事にしようってやっぱりそういうところから、人を大事にすることが第一歩で、そういう人たちは戦争なんてしないんですよ」

 武田さんは、戦後50年には那須さんとコンビを組み「ねんどの神さま」という絵本を制作するなど、長年の交流がありました。那須さんからは自身が被爆した時の話も聞いたといいます。

武田さん 「板切れ一枚で生死が分かれたっていう話をなさって。板切れのこっち側に那須さんはいた、でも向こうにいる人は死んじゃってた、そういう話をする時は非常に怖いお顔で話していました。『本当に戦争なんてくだらないからしちゃいけない』と何度も何度も那須さんの口から聞いています」

 被曝する前の子どもの頃に戻ってしまったかのような「ばあちゃん」との穏やかな日常を通じ、中学生のヒロシくんは「ぼくらはぜったい戦争なんかしない」と決意します。

 実は、この絵本の原稿は元々、歌詞として書かれたものでした。「ばあちゃんの詩」というタイトルが付けられたこの原稿が公になったのは那須さんが亡くなった後のことです。

広島市文化財団 山本真治さん 「まさに那須先生からの遺言。那須先生自身に代わってこの絵本が語ってくれる」

 原稿を保管していた広島市文化財団の山本真治さんです。那須さんに作詞を依頼したのも山本さんでした。

山本さん 「2015年の被爆70年に向けて広島にゆかりのある作家や作曲家に依頼して“ヒロシマの音楽”を作っていくということをやっていた。那須先生は作詞とかやったことないんだけど『広島のためだから引き受けましょう』と言ってくれた」

 那須さんが作詞し、作曲家の冬木透さんが曲をつけた「ふるさとの詩」。戦後70年、2015年に行われた平和記念コンサートで初めて披露されました。

 そこには、客席でカーテンコールに応える那須さんの姿もありました。この時、那須さんが作った詩は実はもう一つあったのです。それが絵本の原作となった「ばあちゃんの詩」です。

 歌詞としては採用されず、しばらくの間、山本さんのパソコンに残されていたこの詩は、那須さんが亡くなった2021年に「遺稿」として注目を集めます。

 そして戦後80年の今年、那須さんの遺稿は絵本として出版されることになりました。作画を担当した武田さんは、那須さんが亡くなる前に話してくれたこんな言葉が印象に残っているといいます。

武田さん 「『これからは俺発言していくからね』と言われたことをすごくよく覚えています。『いやだ』『ノー』という意思表明をすることを忘れた時に何かすべて止まってしまう」

那須正幹さん 「子どもたちに戦争の悲惨さというよりも戦争の実態、あるいは原爆の悲惨さではなく実態、それを伝えるような物語を、僕も72ですから、あと何年書けるか分かりませんが書いていきたいと思っています」

 2014年に広島で行われた講演会で、作家として戦争の実態を伝える決意を語っていた那須さん。戦後70年を迎えた2015年には、多くの講演依頼が舞い込む状況にこう話していたといいます。

山本さん 「被爆70年の時点で語れる人がもういない。もう皆亡くなっていた。被爆80年の時にぼくは82歳だから、まだその時は元気だろうから、いろんな講演会とか取材を受けて被爆者としてきちんと事実を伝えたいと。まさに那須先生が80年にやろうとしていたことを、この絵本が代わりにやってくれているように感じて先生も喜んでくださってるのじゃないか」

 戦後80年。那須さんの思いは絵本を読む子どもたち、そして那須さんの本を夢中で読んで育った、かつて子どもだった大人たちに託されました。この絵本の「あとがき」には、那須さんが1990年に書いたエッセーが掲載されています。

なぜ日本は平和なのか(1990年記) さあ、これから40年間、日本は平和でいられるかどうか。それを決定するのは、政府でも日米安保条約でもない。きみたちの一人ひとりが、戦争を体験した世代と同じように、いや、もっと強力に、「戦争は絶対にいやだ」と、大きな声で叫びつづけることだと思う。沈黙したとたん、戦争はたちまち、きみのまわりに忍びよってくるにちがいない。

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