春のセンバツ甲子園初出場の壱岐高校を応援するシリーズ企画「春一番の壱岐っ子旋風」。取材を担当しているキャスターの岩本目線で、21世紀枠に選ばれた秘密をひも解きます。初回のテーマは「飽くなき向上心と謙虚な姿勢」です。
彼らに初めて話を聞いたのは、創部初の九州大会出場を決めた直後。快挙を成し得たあとも、いたって冷静でした。
壱岐高校は、今年創立116年。硬式野球部は1978年(昭和53年)の夏の県大会で準優勝したのが過去最高。部員25人全員が島出身の壱岐っ子です。彼らの目標は島民の悲願でもあり、初めての九州大会出場は島全体に元気を届けました。
初戦は、熊本第一代表で甲子園出場経験のある強豪・専大熊本玉名。苦戦が予想される中、壱岐っ子は普段通りのプレーで、県大会に続いて九州でも風を吹かせます。6対3で専大熊本玉名に勝利。
そして…準々決勝。何度も言い続けてきた、「自力」での甲子園まであと1勝です。沖縄第二代表のエナジックスポーツに2対9で7回コールド負け。再び、風を吹かせることはできませんでした。
九州大会ベスト8。離島のハンデを抱えながらも、ひたむきに白球を追う姿。そして部員25人、全員壱岐っ子。壱岐高校の評価は高く、21世紀枠での県推薦校、そして全国9地区の代表に選ばれ、最終選考を待つまでになりました。再び…小さな風が吹き始めました。夢の切符、島民の悲願があと一歩に迫りますが、彼らにおごりはなく謙虚な姿勢に変わりはありませんでした。
長崎県の学校がこれまで21世紀枠に選ばれたことはありません。一抹の不安が残る中、彼らはいつも通りに練習を繰り返していました。
喜びと希望に満ちた表情の一方で、既に次のステップを見据えていました。「壱岐から甲子園」。中学生の野球少年たちが思いをひとつに入学したのは3年前。監督を信じ、仲間を信じ、家族や地域に支えられ、ひたむきに取り組んできたこの時間が聖地からの招待状をたぐり寄せました。