大村市が5月、男性同士のカップルに対し、事実婚関係であることを示す「夫(未届)」と記載した住民票を交付しました。同性婚が認められていない日本では異例の措置です。28日会見を開いた2人は喜びを語り、「同じような自治体が増えたら」と話しました。
松浦慶太さん(38):
「『夫』って書いてもらった書類って今まで一つもなかったので、そうやって認めてくれるところがあるんだ。しかもそれが引っ越してきた大村市がそういうふうにやってくれるんだというのがうれしかったです」
そう喜びを語ったのは、大村市に住む38歳の松浦慶太さんとパートナーで39歳の藤山裕太郎さんです。2人は戸籍上、男性同士のカップルです。今回、注目されたのは、大村市が5月2日付で2人に対し交付した住民票です。松浦さんが世帯主の一方、藤山さんが事実婚関係を示す「夫(未届)」と記載されています。この記載は、同性婚を認めていない日本では極めて異例の対応で全国で初めてとみられます。
松浦慶太さん(38):
「僕たちの生活実態として異性の婚姻関係と全然変わらない。普通に一緒にご飯を食べて、一緒に家事をして、一緒にテレビを見て、ささやかな暮らしをしてて、生活してて全然違和感がない。そういう実態をぜひ国は認めていただけたらなと思ってます」
2人は今年3月、兵庫県尼崎市から大村市に引っ越し、松浦さんは、市の魅力を発信する地域おこし協力隊として活動しています。5月2日、住民票を得るために大村市役所で手続きをした際、続柄の欄への記載で、藤山さんを「夫(未届)」にすることを希望しました。市の担当者は、検討した上で、その場で受理したということです。事実婚関係を示す記載が適用されたことで、交渉出来る根拠が出来たとして、2人は今後、健康保険組合の扶養控除や、配偶者に認められている補助金の申請を検討したいとしています。
藤山裕太郎さん(39):
「この前例がないような先進的なことを大村市がしてくれるということはすごく自分たちの後押し、励みにもなったし、これからも同じような自治体が増えてLGBTQや色々な多様性の方たちが住みやすい日本になっていってくれたらいいなと思っています」
松浦慶太さん(38):
「夫(未届)という続柄って事実婚に使われる続柄です。ということは2人は事実婚関係なんです。ということは事実婚関係で認められている権利というのは当然認められるというのが、ロジカルに考えたらそうなるんじゃないかなというふうに思っています」
大村市では去年10月、性的マイノリティー=LGBTQなどの人たちを自治体が公的に認め、市営住居への入居や母子健康手帳の交付などの行政サービスが受けられるようになる「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。理解促進のために全国の自治体で導入が進んでいて、2人は4月、この制度の利用を申請し、受理されていました。市も28日、会見を開き、この申請受理が今回の判断基準になったと明かしました。
園田裕史大村市長(47):
「国の制度や法律を越権をしてこういった対応をとったということではありませんし、事実婚であるということを認めるためにこういったことをやったということではなく、パートナーシップ宣誓制度を導入している自治体として、対応が我々自治体の裁量の中で出来るということについては、出来る限りの対応を現場で確認をして対応をしたということで問題だというふうには考えておりません。(職員は)いい対応をしたというふうに考えています」
一方、事実婚の夫婦に認められている社会保障や相続について、園田市長は「理解が広がってほしいという思いはある」とした一方、制度改正は国が議論するべきとの見解を示し、踏み込みませんでした。市は現在、今回の判断が妥当であったか、総務省に確認中だということです。
午後、会見を開いた松本剛明総務大臣は、大村市から事情を聞いて対応を検討していくと述べました。
松本剛明総務大臣:
「『夫(未届)』というのは既に、実務上一定の官民で利用されているようでもございまして、この実務上の面からしますと、いわば今使われている定義ともし異なるとすれば、また実務上の課題はあるのではないか」