11年もの時を経てようやく返還が実現する見通しです。対馬市の観音寺から盗まれ、韓国に持ち込まれた仏像をめぐる裁判で、韓国最高裁は、所有権を主張する韓国の寺の訴えを棄却し「観音寺に所有権がある」との判断を下しました。
ANNソウル支局・井上敦支局長:
「韓国の最高裁にあたる大法院は先ほど、所有権を主張した原告の韓国の寺の訴えを棄却しました。盗難から11年、ようやく返還への道筋が見えてきました」
午前10時すぎ、判決の連絡を受けた観音寺の田中節竜住職(48)は、安堵の表情を浮かべました。
観音寺・田中節竜住職:
「ひとつ区切りがついたのかなと」
(Q.この11年は?)「喉に魚の骨が詰まったような感じ…地域の方のことを一番考えていた」
この裁判は2012年10月、韓国の窃盗団が観音寺から盗み、韓国に渡った県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」を巡り、瑞山市の浮石寺が、「14世紀に倭寇に略奪された」と所有権を主張、「盗品」として保管する韓国政府に引き渡しを求めたものです。
最高裁は「日本側の取得時効が成立している」として、二審と同じく「所有権は観音寺にある」との判断を下しました。
原告の浮石寺の住職は「倭寇から観世音菩薩を守ろうとして倒れた高麗人の背中に再び刀を刺した野蛮な判決。韓国最高裁は武力的、不法的略奪を合法化した。子孫として到底認められない」と怒りを露わにしました。
一方、所有権が認められた観音寺の檀家はー。
檀家(付近住民):
「うれしかった。代々拝んできた御本尊ですからみんな気持ちは同じ」
総代長の村瀬辰馬さん(69)は、返還を見届けることなく去年、老衰で亡くなった事件当時の総代長の父・敬三さん(享年90)の遺志を継ぎ、返還を願ってきました。
村瀬辰馬総代長(69):
「このうれしいニュースを生きている間に聞かせてあげたかった。(父も)喜んでいると思う」
観音寺の田中住職は、今後も早期返還を求めていくとしています。
観音寺・田中節竜住職:
「最終的には対馬に戻ってきて地域の方がそれを見て安心する表情を見ることが一番の私の願い」
韓国外務省は「最高裁判決を尊重する。これで仏像の所有権が最終確定したと認識している。返還手続きは関係法令に従い、関連機関が決めていく」と話しました。
日本政府の対応について村井英樹内閣官房副長官は。
村井英樹内閣官房副長官(43):
「本件仏像が所有者である観音寺に早期に返還されるよう韓国政府に働きかけるとともに、観音寺を含む関係者と連絡をとりつつ適切に対応してまいりたい」
また大石知事は「盗まれた仏像は我が国の文化財として地域の人々にとって大きな心の拠り所となり歴代伝えられてきた貴重な財産で、正当な権利が認められたことは大変喜ばしい。判決の結果に基づいて仏像ができるだけ早く返還されるように、引き続き関係機関と連携を図っていく」とのコメントを発表しました。