今年3月、佐世保市で、同居する74歳の妻を殺害した罪に問われた75歳の男の裁判員裁判が長崎地裁で始まりました。検察は男が過去にも殺人の罪を犯していたことを明らかにし、弁護側は、介護疲れによる情状酌量を求めました。
起訴状によりますと、佐世保市世知原町の無職、前田敏臣被告(75)は、3月13日(月)の未明、市営住宅で同居していた妻・英子さん(当時74)の首を、刃渡り約20cmの刺し身包丁で1回突き刺し、失血死させた罪に問われています。
きょうの初公判、車いすで出廷した前田被告は、「間違いありません」と起訴内容を認めました。量刑が争われます。
前田被告は24歳だった1972年、当時従業員として働いていた飲食店で、客と口論になり、包丁で刺し殺そうとした殺人未遂の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けたほか、33歳だった1981年、借金をめぐるトラブルから当時の妻を殺害し、殺人の罪で懲役6年の実刑判決を受けていました。
冒頭陳述で検察側は「前田被告は、英子さんが持病の影響などで犯行の数日前から寝たきりとなり、体調が悪化していたことから、『病院に行くお金がなく、今後もお金のない生活が続くと思うと、殺した方が、妻にとっても楽になるのではないか』と考え犯行に至った」などと主張しました。その上で裁判員に対し、「被告人が今までどのような罪を犯してきたのか、そして殺人に対し、どのように考えているのか」など人命軽視の傾向に着目するよう求めました。
弁護側は「介護疲れによって引き起こされた殺人で、心神耗弱状態にあった。私利私欲のための殺人ではない」などと主張しました。次回、18日の公判では、被告人質問が行われます。