春のセンバツ甲子園初出場の壱岐高校を応援するシリーズ企画「春一番の壱岐っ子旋風」です。シリーズ2回目の今回は、大移動の今季初練習試合に密着取材で迫ります。
県内各地の公立高校で卒業式が行われた3月1日。壱岐高校でも8人の野球部員が門出の日を迎えました。甲子園に挑む1・2年生が礎を築いてくれた卒業生に感謝の思いを伝えました。
名残惜しい時間が終わり、港に集まってきた選手たち。対外試合が解禁され、翌日の練習試合に向けて佐賀・唐津港へ移動します。
離島で暮らす彼らにとって、島外での練習試合は大きな負担を伴います。移動時間は約1時間半。限られた時間を有効に使います。空きスペースに集まってミーティングをしたり、新しく取り入れたトレーニング器具の使い方を説明したり。チーム全体の時間が終わって、それぞれ自由になるとグローブの手入れに、選手同士で体のケアも行います。
1回の遠征でかかる費用は、フェリー・レンタルのバス・宿泊代などチーム全体で約30万円。1年間に20回程遠征していて、公式戦以外は学校からの補助もなくすべて部員負担。1人当たり1回1万~1万5000円と経済的な負担は少なくありません。
唐津港に到着。荷物を積み込んでレンタルしたバスへ。坂本監督が自ら運転です。佐賀での遠征では青年会館に宿泊。夜遅くまで自主的にバットを振り続けました。
今季初の練習試合。この日は県内外で20年以上の指導歴がある外部コーチの森さんがチームに帯同。遠征の時や島内での練習には月1回、指導に訪れます。いよいよと思った矢先…雨で始められません。貴重な実践の機会が危ぶまれましたが…およそ2時間遅れで、待ちに待った試合開始です。
力試しの相手は去年秋の佐賀県大会ベスト4の実力校・北陵。壱岐のスタメンは九州大会で9番打者だった中上が打順を上げ6番に起用。紅白戦での積極的な打撃が評価されました。
【中上仁(2年)】「(2ストライクに)追い込まれたら投手が投げやすくなるので、追い込まれる前に勝負してヒットが出たらいいな」
第1打席、早速得点圏で回ってきます。初球から積極的に振ります。そして、フルカウント。三振と、簡単にはいきません。
続く第2打席。2ボールから、三塁手の頭上を越える2塁打。チーム唯一の長打を放ちました。
【中上仁(2年)】「(バットの)先っぽで当たったけど、遅い球・変化球を我慢して捉えられたので良かった」
投手は、大黒柱のキャプテン・浦上が先発。紅白戦では不調だったと話すエースが130km前後のストレートに精度の高い変化球を織り交ぜ、緩急を使い分けます。5回を投げて被安打3、無失点に抑えるピッチング。森コーチは、課題が明確になったと話します。
【森康隆コーチ】「まっすぐの精度が良くなかった」立ち上がりのストレートが高めに浮きがちだったと分析。「上のクラスになるとちょっとした甘いボールがヒットになってランナーが溜まっていきますので、精度を高めていけば試合になるかな」
雨の影響で5回途中0対0で試合はここまで。短いイニングながら課題と収穫が見つかりました。
【坂本徹監督】「もっとジタバタするかなと思ったけど、割と落ち着いてゲームができました。浦上投手を5回で終わって後半違う投手で思ったんですけど、また実戦で調整しながらやってみたい」
目標は、聖地での1勝。センバツ甲子園の過去10大会で21世紀枠で出場した30校のうち、初戦を突破したのは3校のみ。そのうち2校は21世紀枠同士での対戦のため、一般出場校に勝利したのはわずか1校と、甲子園での勝利は大きな壁です。周りから「ハンディキャップ」と言われるような困難も自分たちの工夫で乗り越えてきた彼らならきっと乗り越えてくれるはず。
【坂本徹監督】「全国の21世紀枠の代表として、責任を感じながら戦わなければいけない」
【浦上脩吾主将】「県大会のときから挑戦者として戦ってきて、甲子園でも絶対自分たちは挑戦者という立場なので、相手チームのミスにしっかりつけこめるようにして、まずは1勝を目標にチーム一丸・島一丸となって全力で頑張りたい」