長崎くんちの稽古始め、6月1日の「小屋入り」まで1日でちょうど3カ月となりました。今年の踊町のひとつ麹屋町の出演者らが秋の本番に向け、決起会を開きました。
底冷えがする夜の諏訪神社に男たちの声が響きます…。
73段もある急な石段を一気に駆け上がる「長坂ダッシュ」。秋の本番まで半年以上ありますが、早くもハードなトレーニングを始めています。
23日、町の役員や出演者たち約50人が集まりました。
高濵康弘奉賛会長(76):
「小屋入りに向けてまず準備を整えてそして小屋入りから本番に向け最高の演技と言いますか感動ある『ARE』の奉納を目指しみんなで頑張りましょう」
本番に向け、決起会を開くのは初めてです。奉納は本来、7年に一度巡ってきますが、前回2014年からコロナ禍の3年連続中止を挟んで10年ぶりということで、団結力を高めようと開きました。
今回、出演者をまとめる長采の山本泰弘さん(56)です。あいさつでは、用意した原稿を読むのをやめ、その胸にあふれる思いをありのまま、短い言葉で仲間に伝えました。
長采・山本泰弘さん(56):
「麹屋町の川船ば最高の演し物にすうで。根曳、分かっとるな。『ようやった』『頑張ったなあ』という奉納ばすうで。頑張るぞ」
ベテランも新人も思いはひとつです。
添采・中島賢二さん(50):
「私は県の建築の職員なので今年桟敷を設計します。くんちと桟敷の設計と二刀流でいきます」
根曳・坂本明洋さん(36):
「今回初参加になります。子どもと一緒に参加させてもらいます。しっかり頑張って皆さんと一緒に頑張りたい」
町では、高校を卒業してからでないと根曳にはなれませんが、奉納が3年延びたことで出演や奉納に関われるようになった若者もいます。
根曳・田河悠聖さん(21):
「正直、時期が延びた分助けられた。ずっと出たいというのは(10年前に)囃子で出させていただいた時から思っていたので、今回出られると決まって本当に気持ちが入っています。一番声を出し、頑張れたらと思う」
川津さくらさん(21)もそのひとりです。女性も「根曳に挑戦したい」という思いもありましたが、今回は子どもたちの「囃子」の指導に当たります。
川津さくらさん(21):
「コロナとかで順延がなかったら自分が麹屋町に携われるのは19歳の年だったので、もしかしたら囃子担当という役職じゃないですけど、そういう役割をもらえなかったと思うので、大人になって全力で町に貢献できると思います」
囃子は小学4年生から6年生の14人で奏でます。「全員女子」という初めての試みです。
一方、奉納が延びたことで、複雑な思いを抱く人も…。實藤康史さんは、54歳で初参加となりました。自分の子どものような世代と共に川船を引き回します。
根曳・實藤康史(54)さん:
「54歳になったんでどうしようかなというところはあったんですけど、みんなお前なら出来るんじゃないかなと言っていただいたんで、自分でも頑張ってチャレンジしてみようかなと思って」
船を操るのは、長采1人と添采4人、根曳22人の合わせて27人で、控えはいません。秋の本番まで、けがをしないことが一番の使命です。
高濵康弘奉賛会長:
「毎年川船は一艘出ますよね。その中で麹屋町の船は一番大きいです。そこで注意してけががないようお願いします」
去年11月から始めたトレーニングは週3回、今はストレッチなどが中心ですが、週に1度は、諏訪神社の長坂を駆け上がる「長坂ダッシュ」で体をいじめています。
長崎くんちで「川船」を奉納する町は7カ町ありますが、麹屋町の船は長さ6.5m、重さは3tを超え、最大です。1回目の東京オリンピックが行われた60年前の昭和39年(1964年)から「川船」を奉納している麹屋町。町の人は、「川船(かわふね)」とは言わず、「大きな船」をイメージしてもらえるよう「川船(かわぶね)」と呼ぶそうです。演技の途中、霧状の水を噴く趣向は麹屋町だけの演出です。そしてもうひとつの見所は、根曳が息を合わせて挑む連続5回の船回し。
長采・山本泰弘さん(56):
「今年は10年ぶりなんで、やっぱり長かったなという思い。でもトレーニングをいざ始めたら、『よーし、10月の7、8、9にやるぞ』という気持ち」
6月1日の長崎くんちの稽古始め、「小屋入り」までちょうど3カ月、麹屋町の27人の男たちはもうやる気満々です。
今年の長崎くんちは、麹屋町をはじめ、本踊「石橋」の興善町、「弓矢八幡祝い船」「山伏道中」「剣舞」の八幡町、本踊の万才町、「鯱太鼓」の銀屋町、「龍踊」の五嶋町、「龍船」の西濵町。この7カ町が奉納の出番を迎えます。