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2023/11/15

【長崎】雲仙・普賢岳噴火からまもなく33年…平成新山の現状は 防災視察登山リポート

【長崎】雲仙・普賢岳噴火からまもなく33年…平成新山の現状は 防災視察登山リポート

雲仙・普賢岳の噴火から17日で33年です。噴火のあとにできた溶岩ドーム「平成新山」の現状を調査する防災視察登山に記者が同行しました。

今季一番の冷え込みとなった13日。登山口の仁田峠に九州大学や地元・島原市のほか気象庁、警察・消防などから約100人が集まりました。

金山隆之介記者:
「本来あちらに見えているはずの平成新山は現在、霧に覆われ姿が見えません。これから尾根伝いに歩いて、平成新山を目指します」

1990年11月17日、198年ぶりに噴火した雲仙・普賢岳。翌1991年6月3日の大火砕流では消防団員や警察官報道関係者ら43人が犠牲になりました。2年後にも火砕流で住民1人が亡くなり、終息宣言が出るまで5年半かかりました。
この間、約9400回の火砕流を起こしながら形成されたのが、溶岩ドーム「平成新山」です。

防災視察登山は、現状を調べ、避難計画に反映するため、九州大学や島原市などが毎年春と秋に行っていて、今回で34回目です。霧に包まれ、霜が降りた登山道。登り、下りを繰り返しながら進みます。

金山記者:
「最初のスタート地点から2時間ほど登り、現在午前11時ごろです。ここからは警戒区域ということで、一般の登山客の方は入れません。今回は特別な許可をもらって入っていきます」

普段、立ち入りが禁止されている警戒区域に入ると、すぐに目の前が開け、霧氷の着いた木々が茂る溶岩ドーム「平成新山」が姿を現しました。その規模は、東京ドーム約80杯分の約1億立方メートル。大小、茶褐色の岩石は全てマグマが冷えて固まった溶岩です。足元はぐらつき、両手を使いながら、時折、へばりつくようにして吹きざらしの中、登り進めますが…。頂上まで残り100mほどという所で、強風のため、山頂での調査は中止となりました。
ただ、14日に改めて九州大学のチームが登頂し、山頂部の噴気の温度を調べると92.9度。ここ10年、90度前後で推移していて、変化が見られなかったことから火山活動は安定していると判断しました。
一方、危険性が指摘されたのが、風化や地震による溶岩ドームの崩落。そして、噴気が火山内部にたまって起きる水蒸気爆発です。

九州大学地震火山観測研究センター・松島健教授:
「全然地震も大雨が降ったわけでもないのに突然崩れることもあるので、なかなかいつ崩れるかは予測しにくい。いつ地震があるか分からないし(大きな崩落があるなら)地震があって崩れるんだろうと」

平成新山では2年前、山頂の一部が崩落。現在も毎月10回程度、わずかな地震が観測されています。崩落のほか、水蒸気爆発についても予知は難しいといいます。
では、噴火の予知はどうなのでしょうか?

火山噴火予知連絡会会長・九州大学 清水洋名誉教授:
「非常に大きく顕著にマグマが上がってくるとかいうことであれば分かるが、ゆっくりとかわずかな量だと検出はできない。つまりマグマの動きを捉えることができても、予知ができるかというと必ずしもそういうわけではなく、マグマが上がってきても噴火未遂で終わることの方が多い。だから前兆はつかめても噴火につながるとは限らない」

金山記者:
「平成新山の隣、普賢岳の山頂にまでやってきました。そして向こうに見えるのが平成新山の山頂です。山頂からも噴気が上がっていて火山であることを改めて実感します」

多くの尊い命を奪いながら形成された平成新山。自然災害の恐ろしさを強烈に印象付けた一方、四季折々変わる表情は登山客に愛されています。

登山客の夫婦(長崎市から):
「きょうは80歳の誕生日で毎年11月のお誕生日はここで写真を撮るようにしている」
「11月に霧氷と一緒に見られるのは初めて。雲に隠れて見えないのがほとんどで、初めてこんなにきれいな平成新山を見た。いつ来ても良い」

防災視察登山は記憶の伝承とともに災害を想定した訓練の役割も果たしています。

平成新山に初登山した地元消防士:
「(学校で発災時の)映像を何回も見てきたが怖い印象がとても強く残っているので、避難や救助活動が必要になれば全力で取り組んでいきたい」

いつ再び起こるか、予知できない噴火。しかし、前兆をつかむ調査は進んでいます。

九州大学・清水洋名誉教授:
「実は橘湾の地下15kmくらいのところに雲仙岳の大元のマグマ溜まりがあることがこれまでの研究で分かってきているが、一番深いマグマ溜まりに、また少しずつマグマが溜まってきているだろうと。これから何十年、何百年という時間をかけながらマグマ溜まりにマグマが溜まって一杯になると、浅い方(平成新山の方)に移動して次の噴火になる」

平成新山を含む雲仙岳の噴火警戒レベルは現在、最も低い「1」。火山であることを認識し、気象庁や自治体が発表する情報に注意する必要があります。

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