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NCCアナウンサー 溝田 浩司ブログ
サーカス
ひとりの少女のことが知りたくなってサーカスを訪ねた。緑色をしたテントの裏側にまわると、団員たちが暮らす灰色のコンテナが並んでいた。平均年齢18歳。若い団員たちの生活空間は、想像していたよりずっと質素に見えた。コンテナは明らかに男性用と女性用に分かれているようで、ほかに炊事場や洗面所、洗濯場などもあるようだ。その女性用のコンテナの一角から現れた小柄な女性がウ・キュウケツさんその人だった。
スーパードリームサーカスは、中国各地の雑技団から選び抜かれたトップアーティストたちの集団だ。およそ2ヵ月ごとに日本国内を移動し、連日アクロバティックなショーを披露している。空中ブランコや大車輪など仕掛けの大きな演目が多いなか、ウさんはたったひとりで軟体芸を披露している。ステージ中央に立てられた1本の鉄の棒の上で繰り広げられるその芸は、体のやわらかさはもちろん、絶妙な身体バランスによって成り立っている。
会場に流れるのはスローなラブバラードだ。片手ひとつで棒の上に逆立ちになると、2本の足と1本の腕がゆっくりとバランスの在り処を確かめるように位置を変えてゆく。棒の高さは2メートルほどあるだろうか。ひとつバランスを間違えれば無事ではいられないはずだ。曲にあわせるように一つの形が出来上がると、切ないほどの視線が客席に向けられる。我を忘れて見入っていた客は、そこではじかれたように拍手を送るのだ。
ステージとは違い、髪をおろした彼女は14歳のあどけない表情で質問に答えてくれた。
「雑技団に入ったのは4歳半のころでした。あこがれていたんです雑技団に。だってとっても華やかでしょう。最初のころは床の上で軟体芸をしていました。初舞台は8歳のときだったかしら。緊張していてほとんど覚えていないわ。12歳のときに今の片手芸をするようになったんです。とても難しいの。集中していないと大変なことになるわ。いつだったか心も体も疲れ果てて、やめてしまいたいと思ったこともあるの。でも、やっぱり雑技が好きだったからやめることはしませんでした。雑技団に入れてくれた両親にはとても感謝しています。もっと上手になっていつか必ず恩返しをしたいと思っています。日本での生活はもうすぐ1年です。さびしくはないです。団員はみんな家族みたいですから。そう、ステージでもお客さんの拍手はよく聞こえているんですよ。拍手がもらえるととってもうれしいです。わたし拍手がとっても大好きです。きょうはお話を聞いてくださってありがとうございます」。
スーパードリームサーカス長崎公演は、いよいよ12月20日に最終日を迎える。次の公演先は佐世保だ。その公演が終わると、彼らはふるさと中国へと帰ってゆく。彼女と会うのはこれが最初で最後になるに違いない。
「応援しているよ、がんばってね」。
別れ際に握手をした。大きくてやわらかい手をしていた。
スーパードリームサーカスは、中国各地の雑技団から選び抜かれたトップアーティストたちの集団だ。およそ2ヵ月ごとに日本国内を移動し、連日アクロバティックなショーを披露している。空中ブランコや大車輪など仕掛けの大きな演目が多いなか、ウさんはたったひとりで軟体芸を披露している。ステージ中央に立てられた1本の鉄の棒の上で繰り広げられるその芸は、体のやわらかさはもちろん、絶妙な身体バランスによって成り立っている。
会場に流れるのはスローなラブバラードだ。片手ひとつで棒の上に逆立ちになると、2本の足と1本の腕がゆっくりとバランスの在り処を確かめるように位置を変えてゆく。棒の高さは2メートルほどあるだろうか。ひとつバランスを間違えれば無事ではいられないはずだ。曲にあわせるように一つの形が出来上がると、切ないほどの視線が客席に向けられる。我を忘れて見入っていた客は、そこではじかれたように拍手を送るのだ。
ステージとは違い、髪をおろした彼女は14歳のあどけない表情で質問に答えてくれた。
「雑技団に入ったのは4歳半のころでした。あこがれていたんです雑技団に。だってとっても華やかでしょう。最初のころは床の上で軟体芸をしていました。初舞台は8歳のときだったかしら。緊張していてほとんど覚えていないわ。12歳のときに今の片手芸をするようになったんです。とても難しいの。集中していないと大変なことになるわ。いつだったか心も体も疲れ果てて、やめてしまいたいと思ったこともあるの。でも、やっぱり雑技が好きだったからやめることはしませんでした。雑技団に入れてくれた両親にはとても感謝しています。もっと上手になっていつか必ず恩返しをしたいと思っています。日本での生活はもうすぐ1年です。さびしくはないです。団員はみんな家族みたいですから。そう、ステージでもお客さんの拍手はよく聞こえているんですよ。拍手がもらえるととってもうれしいです。わたし拍手がとっても大好きです。きょうはお話を聞いてくださってありがとうございます」。
スーパードリームサーカス長崎公演は、いよいよ12月20日に最終日を迎える。次の公演先は佐世保だ。その公演が終わると、彼らはふるさと中国へと帰ってゆく。彼女と会うのはこれが最初で最後になるに違いない。
「応援しているよ、がんばってね」。
別れ際に握手をした。大きくてやわらかい手をしていた。
2009年12月10日
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