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NCCアナウンサー  溝田 浩司ブログ:2007年12月

2007年暮れ

"2軒隣りの空家が解けたのは、夏の台風から1ヵ月ほどが過ぎた秋口のことだ った。狭い土地に隙間なく建てられたその木造の平屋は見るからに日当たりが 悪く、人が住まなくなって数年が過ぎていた。表には子供のころよく見かけた むき出しのガス釜があり、モルタルかなにかでできた囲いが申しわけ程度に立 てかけられていた。

実家にもこれとよく似たものがあった。一応風呂場から点火できるようになっ ていたが、雨の日など調子が悪いときは傘をさして直接火をつけに行かなけれ ばならなかった。なぜ、そんな不便なものを使い続けるのかと親を恨んだこと もあったが、いまその愚痴をいう親もいない。

解体には数日かかっただろうか。建物がすっかり取り払われた跡には、まだ風 呂場のタイルや水道の管などが残されていて、まるで過去の生活を覗いている ような感覚だった。アスファルトを四角く切り取ったようなその土地は、しば らくするときれいな更地になり、やがて単身者向けのアパートが建った。

我が家に起きた異変と、空家の解体には関係がないかも知れない。しかし、時 期が重なるだけに我が家では暗黙の了解となっていた。空家の住人は、以前自 ら命を絶ったというもっぱらのうわさだったからだ。

深夜にその異変は起きた。バス通りの車もなくなり、テレビを消せば秒針の音 が響くほどの静かな夜に、コツコツと響くその物音は隣の仏間から聞こえてく るのだ。
「やあ、こんな夜更けにどうしました?」。
そんな冗談を言いながら勢いよくふすまを開けても、そこにはただ沈黙が広が るだけだった。
「父さんかい?ひさしぶりだね」。
家族がいないことを確認したうえでそう問いかけてもみたが、結果はむろん同 じだった。その度に、普段あげもしない線香に火を灯し、暗闇の中ひとり手を 合わせた。

そんな夜が数日続いたころ、ようやくその正体がシッポをだした。端緒は荒ら された仏壇の供え物だった。さっそくねずみ捕りを買ってくると、あらゆる場 所に仕掛けた。しかし、ねずみは一向にかからない。発想を変え、家の外にわ なを仕掛けることにした。ねずみとはいえ、たまには外出するはずだ。見ると、 外壁に床下へ通じる小さな穴があった。

そんなこともすっかり忘れてしまったある日の朝。ふと思い出してねずみ捕り の箱を持ち上げてみると、はたして不気味な重さが手に伝わってきた。ぞっと したのも束の間、まるで人を殺めてしまったかのような気持ちになり、そっと 目を閉じた。

神様への初詣を競った動物たちの話。十二支の民話によると、牛の背中に乗っ たねずみは、到着直前に牛よりも先に飛び降りて一番乗りを果たしたのだそう だ。来年は子年。我が家のねずみには詫びを入れつつ、新年は利口なねずみに 少しでもあやかりたいものだ。"

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溝田 浩司

1990年4月入社
福岡県出身
福岡大学卒
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