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NCCアナウンサー  溝田 浩司ブログ:2007年10月

速歩

"テレビによると福田総理の健康法は速歩だそうだ。だからというわけではないが、このと ころ休日の度に早起きして、朝から早歩きに出かけることにしている。福田総理は昭和11 年生まれの71歳。それに比べれば数十歳も若い洟垂れ小僧が速歩とは情けねぇ。走ればよ いではないか!とのお叱りの言葉が聞こえてきそうだが、会社では一日の大半をパソコン の前で過ごし、昼食に出前のカツ丼や皿うどんの太麺を食い、休みの日ともなれば寸暇を 惜しんで惰眠をむさぼり、毎年の健康診断では医師に「なにかスポーツは?」と聞かれき っぱりと「何もしていません」と答えるような人間が急に、しかも早朝にジョギングでも 始めようものなら、走り始めて数分も経たないうちに、たとえば公衆トイレの前のような 不可解な場所で心臓発作を起こして倒れて救急車で運ばれ、入院したはいいが同僚は忙し いので見舞いには来ず、退院後に「病院のご飯は案外おいしかったよ」とか「やっぱり若 い看護師さんはいいね」などとどうでもいいようなオヤジ話しを突然始めるような性格に なって後輩から煙たがられるのが落ちである。

しかし、速歩といっても侮ってはいけない。長崎は坂の町であることをお忘れではなかろ うか。総理官邸の赤じゅうたんの上を早歩きするのとはちょっとわけが違う。車が通る道 路はいかに早朝とはいえ危ないので、私の場合車の通らない路地がお気に入りのコースだ。 当然、平坦な道などほとんどない。坂道あり、階段ありの起伏に富んだ道を休まずに黙々 と歩き続けるのだ。したがって走らずとも、ものの数分で背中に汗がにじむ。しかも、毎 日違う道を歩くので景色が変わって飽きることがない。斜面地に複雑に張り巡らされた生 活道路は時に奇抜で、標高が高くなるにつれ昭和の面影の残るなつかしい細道や石垣に出 会うこともある。果てしなく続く階段を上りきり、目の前に開けた長崎の町並みを見ると き、登山者にも似た感動を覚えるといえば大げさだろうか。

唯一の欠点は下りである。坂を上れば、当然下らなければ帰れない。坂段を上った足が下 りにどうなるかはご想像の通りで、それまでの勢いはおのずと緩めざるを得なくなる。下 るうちに汗が引いてしまうこともしばしばだ。ある日、道の続く限り上ってみようと歩き 続けたことがあった。小高い山のてっぺん近くになると次第に民家が減り高木が目立ち始 めた。このまま行けば本当に登山になってしまうのではないかと心配し始めたころ、行く 手に忽然とカトリックの墓地が現れた。朝の静けさに包まれた墓地の入り口には色鮮や かなマリア像がたたずんでいた。見ると門扉は閉ざされることなく誰かがそうしたように、 ひかえめに開かれている。数百もの墓石が並ぶ墓地には、白い十字架と大きなマリア像が 置かれていた。朝日に照らされ、まぶしいほどに輝くマリアさまの顔が実は今も脳裏から 離れないでいる。"

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溝田 浩司

1990年4月入社
福岡県出身
福岡大学卒
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